小説「新・人間革命」 厳護 39 1月25日

日蓮仏法の大哲理は、創価学会員という市井の人びとのなかに、確固たる哲学、思想として、生き生きと脈打っている。
 「強い思想を代表しているかぎり、人間は強い」(注)とは、精神分析創始者フロイトの洞察である。
 わが同志たちは、広宣流布の行く手を阻む障害が競い起これば、「此の法門を申すには必ず魔出来すべし魔競はずは正法と知るべからず」(御書一〇八七ページ)と自らを鼓舞し、いよいよ強盛な信心を奮い起こしてきた。
 どんなに厳しい環境にあっても、「浄土と云うも地獄と云うも外には候はず・ただ我等がむね(胸)の間にあり」(同一五〇四ページ)と、一喜一憂することなく、自身の境涯革命をめざして仏道修行に励んできた。
 病に苦しむ時には、「南無妙法蓮華経は師子吼の如し・いかなる病さは(障)りをなすべきや」(同一一二四ページ)だ。仏の大生命力よ出でよ!と、強盛に唱題を重ねた。
 ある人は、「月月・日日につよ(強)り給へ・すこしもたゆ(撓)む心あらば魔たよりをうべし」(同一一九〇ページ)との御文のままに、日々、自分自身に挑戦し、学会活動に取り組んでいる。
そして、「一丈の堀を越えざる者二丈三丈の堀を越えてんや」(同一一五八ページ)と、一つ一つの目標に向かい、着実に、粘り強く、前進の歩を進める。
 また、ある人は、「御みやづかい(仕官)を法華経とをぼしめせ」(同一二九五ページ)と、懸命に仕事に挑戦し、職場で勝利の実証を示そうと努力している。
 さらに、「教主釈尊の出世の本懐は人の振舞にて候けるぞ」(同一一七四ページ)との一節を座右の銘とし、人格を磨き、仏法の人間主義の体現者たらんと奮闘する同志もいる。
 創価学会の教学運動によって、法華経が、日蓮大聖人の仏法が、生活法として、民衆の哲学として、現代に蘇ったといってよい。
 山本伸一は、この教学運動の潮流を、さらに広げ、本格的な民衆仏法の時代を開き、「生命の世紀」を建設しようと心に誓っていた。
 
■引用文献
 注 「精神分析運動の歴史について」(『改訂版フロイド選集・17』所収)懸田克躬訳、日本教文社=現代表記に改めた。