小説「新・人間革命」 人間教育4 2月19日

山本伸一は、集った大ブロック担当員の生命の奥深く、仏法への大確信を打ち込んでおきたかった。広宣流布を推進する幹部としての第一の要件は、信心への、御本尊への、絶対の確信であるからだ。
 さらに、彼の話は、一転して、家庭での振る舞いに移った。
 「今日、参加されている方の多くが、結婚され、子どもさんもいらっしゃることと思います。どうか皆さんは、優しい、いいお母さん、いい奥さんになってください。
 人間革命といっても、決して特別なことではないんです。一例をあげれば、子どもや夫への接し方一つにも表れます。いつも怒りっぽかったのに、怒らなくなった。
笑顔で接するようになった。よく気遣いができるようになった。子どもの言うことを、ちゃんと聞いてあげられるようになった――それが、人間革命なんです。
 また、幸せといっても、自分の身近なところにあるんです。たとえば、家庭で、隣近所とのつきあいのなかで、あるいは、職場で、いい人間関係をつくれるかどうかです。
そして、心から感謝でき、幸せだと思える――そこに、幸福があるんです。
 今日、お帰りになったら、ご主人が信心していても、していなくても、くれぐれも、よろしくお伝えください。信心していなくとも仏縁があるんだもの、やがて、いつか信心に目覚める時が来ます。
焦らずに、お題目を真剣に唱えていくんです。大事なことは、人間として信頼に結ばれることです。
 信心のことで、ご主人と喧嘩したり、夫婦仲が悪くなったりしてはいけません。それは愚かです。すべて包み込んでいくことです」
 伸一は、日々の現実のなかで格闘する大ブロック担当員の苦労も、その胸の内も、よくわかっていた。だからこそ、全員が、聡明に、力強く生きて、尊き地涌の使命を果たし抜き、絶対に幸せになってほしかった。
 彼は、仏を敬う思いで、一人ひとりの参加者に、じっと眼を向けた。