小説「新・人間革命」 人間教育6 2月22日

一月三十一日、山本伸一は、創価文化会館の広宣会館で行われた、
新宿、港、千代田、世田谷、目黒、中野、渋谷、杉並の各区からなる、第一東京本部の女子部大ブロック長(現在の地区リーダー)勤行会に出席した。
 彼は、まず「立正安国論」の「如かず彼の万祈を修せんよりは此の一凶を禁ぜんには」(御書二四㌻)の御文を拝した。
 「この御文は、社会の繁栄、平和を実現するために、さまざまな方法、手段を講ずるよりも、まず、不幸の根本原因である、誤った教えという一凶を絶つことが大事だと述べられているところです。
それは、私どもの生き方についても言えます。
 たとえば、夜更かしなど不摂生が重なり、体調を崩した人がいたとします。その人にとっては、不摂生こそが一凶です。それを改めなければ、どんなに栄養をとっても、健康にはなれない。
同じように、私たちが、人間革命し、幸せになっていくうえでも、それを阻んでいる一凶というものがあります」
 皆、目を輝かせて、話に耳を澄ましていた。
 「自分の思い通りにいかないと、投げやりになったり、自身を卑下したりするのも一凶です。自分の失敗や不幸を人のせいにする生き方や、広宣流布のために、皆と心を合わせられないというのも一凶でしょう。
また、困難に出くわすと、物事を投げ出したり、逃げてしまうという傾向性も一凶です。そのほかにも、人それぞれに一凶があるでしょう。
 そこで、自分の一凶は何かを見極め、それを絶とうと決め、懸命に唱題し、自身に挑戦していくことです。そこから、人間革命の戦いが始まるんです」
 このあと、伸一は、女子部の時代は、長い人生のうちで、一切の土台となる、最も重要な時期であると語った。
そして、この青年期に、自らを鍛錬し、一凶を絶っていくことが、人生の幸福を勝ち取っていくうえで、極めて重要であると訴えた。
 「鉄は熱いうちに打て」である。鍛えなき青春では、人生の試練に打ち勝つ人格は築けぬ。