小説「新・人間革命」 薫風 25 2012年 2月27日

山本伸一の言葉に、峯子は大きく頷いた。峯子の実家も草創の時代から、地域の会場であった。
一九五二年(昭和二十七年)の「二月闘争」の際も、蒲田支部の活動の中心拠点となったのである。
峯子は、笑みを浮かべて語った。
「個人会館の果たす役割は、本当に大きなものがありますね。
また、会場を提供してくださる方のご苦労は、並々ならぬものがあります。駐車や駐輪で近隣にご迷惑はかけていないか。
会合の声が外に漏れていないか。皆さんの出入りの音がうるさくないか──と、気遣うことも本当に多いですしね。頭が下がります」
「そうだね。だから皆が、近隣などには、決してご迷惑をおかけしないように、十分に注意を払っていくことが大事だね。
また、日ごろ、会場を使わせていただいている方々は、清掃をするなど、会場提供者の負担が、少しでも軽減できるように配慮しなければならない。
会場を提供することの仏法上の意義は、大変に深いものがある。
仏が法を説き、衆生が仏法の教えを聞くには、人が集まる場所がなければならない。
それが会座だ。法を求め、仏子が集う座談会場や個人会館は、現代における仏法の会座であり、また、精舎(寺院)の役割を担っている。
したがって、個人会館として会場を提供することは、祇園精舎を供養した須達長者の信心に匹敵する。その功徳は、無量無辺だ。大長者の境涯になることは間違いない。
私は、学会の会長として、可能な限り、個人会館をはじめ、会場提供者の方々を訪ねて回り、心から、御礼を言いたいんだ」
「感謝即行動」が伸一の信条であった。
やがて車は、田部会館に着いた。
田部の家は、鉄筋構造二階建てであった。一階が住居で、二階が会館である。
車を降りると、伸一は、門の前で出迎えてくれた田部の一家に声をかけた。
「ありがとう! 立派な個人会館だね」