2012-03-04から1日間の記事一覧

小説「新・人間革命」 薫風 30 2012年 3月3日

山本伸一は、婦人部や女子部学生局、男子部、壮年部の代表にも声をかけ、一人ひとりを包み込むように激励していった。 それから、後ろの方の席に座っていた、痩身の丸顔の青年に視線を注いだ。 創価大学を卒業し、二年前に佐賀県に帰り、市役所に勤めている…

小説「新・人間革命」 薫風 29 2012年 3月2日

佐賀文化会館の和室で行われた懇談会で、山本伸一が最初に声をかけたのは、県の学生部幹部であった。 伸一は、佐賀県学生部が、学生部の機関紙「大学新報」を糧に、生き生きと仏法対話に励んでいる様子を聞くと、笑顔で語った。 「すごいね。学生部が頑張っ…

小説「新・人間革命」 薫風 28 2012年 3月1日

ダッ、ダッ、ダッ、ダッ……。 アパートの階段を、勢いよく駆け上がる足音が響いた。一九七七年(昭和五十二年)五月二十五日の夕刻のことである。 青年が息を弾ませ、部屋のドアを開けた。中には、三人の学生が待機していた。 「おい、急げ! すごいことにな…

小説「新・人間革命」 薫風 27 2012年 2月29日

山本伸一は、田部会館に入ると、待機していた同志に語りかけた。 「こんなにたくさんの人が集まってくれていたんだね。勤行をしても声が漏れないようなら、一緒に勤行をしましょう。大丈夫?」 「大丈夫です!」と、田部忠司が答えた。 「では、小さな声で勤…

小説「新・人間革命」 薫風 26 2012年 2月28日

空には月が輝いていた。弓張月である。 田部会館の門から玄関までは、数メートルほどで、右手には庭があった。 その庭に沿って植えられた菖蒲の花が、建物から漏れる光と月明かりのなかに、ほのかに浮かんで見えた。 山本伸一は、しばし、足を止め、月下の菖…

小説「新・人間革命」 薫風 25 2012年 2月27日

山本伸一の言葉に、峯子は大きく頷いた。峯子の実家も草創の時代から、地域の会場であった。 一九五二年(昭和二十七年)の「二月闘争」の際も、蒲田支部の活動の中心拠点となったのである。 峯子は、笑みを浮かべて語った。 「個人会館の果たす役割は、本当…