小説「新・人間革命」 人材城 4 2012年4月13日

山本伸一は、熊本の地から、多くの人材が育ってほしかった。それだけに、彼の言葉には、熱がこもっていった。
「先輩幹部が、後輩の奥底の一念を見極めていくには、自身の生命に濁りがあってはならない。
わが生命の鏡が、曇っていたり、歪んでいたりすれば、一人ひとりを正しく見極めていくことはできないからです。
結局は、我見になり、自分の好き嫌いで、人を見ていってしまうことになる。ゆえに、常に、唱題第一で、わが生命を磨き抜くんです。
そして、御本尊に照らし、御書に照らし、広宣流布の師匠の指導に照らして、間違いのない、正しく、清浄無比なる信心を貫いていくんです。
それでも、人間の奥底の一念は、すぐにはわからないものです。短期間で見極めることは難しいこともある。
しかし、一年、二年と、長い時間をかけて見ていればわかります。
どんなに表面を装っていても、ふとした時に、驚くような傲慢極まりない言動や、怠惰な態度が出てしまうものだからです。
また、人が見ていない時に、何をしているかに、その人の本質が現れます。
ともかく、人材の根本要件を、一言でいえば、?労を惜しまず、広宣流布の師弟の道に生き抜く人?ということです」
人材のとらえ方には、さまざまな角度がある。真面目、誠実、情熱的、忍耐強いなどといった性格的な面からの見方もある。
また、弁が立つ、行動力がある、感性が豊か、創造性がある、優れた技能をもっているなど、能力面からの評価もある。
さらに、社会的な地位や立場、学歴、経済力等々の観点もある。
しかし、どんなに優れた能力をもち、社会的に高く評価される立場にあったとしても、信心の一念という根本が揺らいでいたのでは、広宣流布の本当の人材とはなり得ない。
奥底の一念を、『広宣流布のため』という大目的に定めてこそ、性格も、能力も、地位も、すべてが生かされ、人びとの幸福実現のための大きな力となるのである。