[第3回] 人間を結べ! つながりは力 ㊤ 2012.3.27/28/29

これまで以上に幸福に!
 
最も苦しむ人の心に、寄り添い続けるのが仏
 
 ──東日本大震災から1年、被災地の同志は、池田先生が震災直後から贈り続けてくださった励ましを抱きしめ、苦難に耐えて、厳しい現実と戦ってきました。
 東北は、聖教新聞の拡大でも全国模範の拡大を成し遂げました。「師匠の大激励に、せめてもの恩返しを」との思いから、皆で頑張った結晶です。新入会の友も相次ぎ誕生し、東北から新たな広布のうねりが巻き起こっています。
 
名誉会長 東北の尊き同志の奮闘は、よく、伺っています。本当にありがたいことです。
 先日(3月18日)、宮城県岩手県福島県を中心に行われた「青年教学1級」の追加試験にも、真剣に取り組み、実に立派な歴史を残してくれました。これも、「行学の二道」の鑑として、必ずや光り輝いていくでしょう。
 日蓮大聖人は、「大難《だいなん》来りなば強盛の信心弥弥悦びをなすべし」(御書1448ページ)と言われました。
 何ものも恐れない、何ものにも屈しない。どんな苦しみも喜びに変えられる──この信心こそ、究極の「心の財」です。
 東北の同志は、未曽有の苦難に、今こそ信心だと歯を食いしばって、不屈の魂で立ち上がられた。この金剛不壊の信心という「心の財」に、黄金の如くダイヤモンドの如く、無量の輝きが備わっていくのです。負けない心、たくましい生命力、広々とした境涯、豊かな福運、みずみずしい智慧、温かな人間性……要するに、風雪を越えた堂々たる人格です。
 そうした人格に触れれば、皆がほっとする。安堵する。希望が湧いてくる。元気になる。
 人に希望を贈ると、自分の希望は減るだろうか。相手が明るくなった姿に、自分もまた力をもらうはずです。それは、「心の財」を分かち合っているからでしょう。「心の財」は、分かち合えば合うほど、増えるのです。
 南米チリの大詩人ネルーダは、「人間とのつながりは、私を豊かにしてくれる大地」と謳っています。大地震で苦しんだチリの同志も、火山灰の被害が広がった隣のアルゼンチンの同志も、皆で手を携えて乗り越えています。
 励まし合い、支え合い、分かち合うなかでこそ、「心の財」は、よりいっそう輝きを増すのです。
 東北の同志は「心の財」の大長者です。人と人のつながりを一段と強め、さらに広げて大偉業の歴史を残しておられる。
 大聖人が、どれほど誉め讃えてくださっていることか。
 私の胸には、「未来までの・ものがたりなに事か・これにすぎ候べき」(同1086ページ)との御文が、東北の団結への御賞讃として響いてきます。
 「信心は東北に学べ!」という時代が来ました。
 御聖訓には「蔵の財よりも身の財すぐれたり身の財より心の財第一なり」「心の財をつませ給うべし」(同1173ページ)と仰せです。
 「心の財第一」で生き抜かれてきた東北家族の福徳は無量無辺です。
        
 ──今月は、春季彼岸勤行法要が、全国の主要な会館、墓園・納骨堂などで厳粛に行われました。
 震災で犠牲になった全ての方への追善とともに、被害を受けた方々の安穏、被災地域の復興を真剣に祈念する会座となりました。
 
名誉会長 「常彼岸」「常盆」と言われるように、私たちは毎日の勤行・唱題で、朝な夕なに、亡き家族も先祖も追善しております。これほど深い孝養はありません。
 私と妻も、東北の同志の健康と長寿と勝利、そして1日も早い復興を強盛に祈り抜いています。
 大聖人は、家族を亡くした門下に、温かな励ましを贈り続けてくださいました。
 南条時光の弟である七郎五郎が16歳の若さで亡くなった時には、母の上野尼御前に真心の手紙を送り、共に悲しまれ、同苦された。
 亡くなってから1年以上、大聖人が、御自身の最期まで、一人の青年を追悼された御手紙は、分かっているだけで、10通近くになります。
 肉親を亡くした悲嘆、とりわけ、わが子を亡くした母の悲しみは、時とともに薄れたりはしないことを、ご存じだったと拝されてなりません。
 最も苦しんでいる人、最も苦労している人の心に、ずっと寄り添う。これが御本仏のお心です。学会精神であり、東北の心意気です。
 「上野殿母御前御返事」では「(七郎五郎殿は)南無妙法蓮華経と唱えて仏になられたのです」(同1570ページ、通解)と断言されるとともに、こう綴られています。
 「悲母であるあなたがわが子を恋しくお思いなら、南無妙法蓮華経とお唱えになって、亡き夫の南条兵衛七郎殿、亡き子の七郎五郎殿と同じ一所《ひとつところ》に生まれようと願っていってください。(中略)三人が顔をお揃えになる時の、そのお悦びは、どれほどか嬉しく思われることでしょう」(同ページ、通解)
 妙法に生き抜いていくならば、生前、苦楽を共にした家族と必ず会えるとの仰せです。死をもってしても、妙法の家族の絆は断ち切れない。たとえ先立たれることがあっても、生命はつながっています。三世永遠の妙法の絆で、親子一体、夫婦一体です。わが胸中に厳然と生きて、見守ってくれています。いつも一緒です。
 夫の高橋殿を亡くした妙心尼には「ご夫君は、誰も訪れない草葉《くさば》の陰で、この娑婆に残した幼子らの行方を聞きたがっているでしょう。しかし、あなたが唱えている題目の妙の文字が仏の使いとなり、娑婆のことを冥途に伝えているから大丈夫です」(同1483ページ、趣意)とも仰せになっています。
 ですから、御本尊を拝すれば、いつでも心の対話ができます。題目を唱えれば、無線のように生命は通じます。
 亡くなった家族や友人のためにも、広宣流布のために生きて、生き抜いて、これまで以上に自分が幸せになっていただきたい。それが、最高の追善となるからです。
        
 ──今回の震災を通し、学会員の励ましの行動が、識者の方から、あらためて評価されています。仙台白百合女子大学の大坂純教授は、「学会には人と人とを『つなぐ力』があります。つながったとき、人は強くなるのです」「創価学会が活躍して、社会の中に温かな『つながりの力』を満たしていただきたい」と期待を寄せてくださっています。
 
名誉会長 温かな、また深い教授のご理解に心から感謝します。
 東北は、もともと地域で助け合う伝統が生きており、「人のつながり」が豊かな天地です。その地域のつながりが、復興の大きな推進力と光っています。
 一方で、従来の地縁や血縁を頼りにするだけでは乗り越えられない課題があることも、この未曽有の震災で浮き彫りになりました。公的な復興への取り組みが、なかなか進まないと指摘される中で、ボランティアの方々の活躍には目を見張るものがあります。全国各地から集まったボランティアの中には、その地に直接ゆかりのない方々も多くおられたでしょう。
 私たちも、会館での被災者の受け入れや、さまざまな救援活動をするに当たって、学会員であるか否かにかかわらず、目の前の困っている方、苦しんでいる方に手を差し伸べてきました。
 それまで、つながりのなかった人たちも、共に力を合わせて問題を解決していく。それでこそ、これまでにない力が発揮され、初めて問題が解決できる──そういう時代に入ってきたのではないかと、私は思います。
 識者の方々が私どもへ寄せてくださっている大きな期待も、従来の「つながり」を強めることはもとより、新たなつながりを広げていく。しかも、そのつながりが温かな励ましと希望に満ちたものであることに注目されているのではないでしょうか。
 17世紀、スペインを代表する思想家グラシアンは語りました。
 「友垣《ともがき》とは逆境からの唯一の救出策であり、魂の安らぎでもある」
 苦悩に沈む人が立ち上がれるまで祈り、励まし続ける。古い友情を大切に、新しい友情を結ぶ。そうした人のつながりから、また新たな価値を創造する──私たち「創価」の真骨頂です。
 
※グラシアンの言葉は東谷頴人訳『処世の智恵』(白水社)。