[第3回] 人間を結べ! つながりは力 ㊦2012.3.27/28/29
──なかなか対話のきっかけがつかめない、という青年の声も聞きます。
名誉会長 あいさつは、それ自体、素晴らしい対話です。
かの釈尊も「自分から語りかける人」だったと言われています。あせらず、臆さず、元気なあいさつから始めればいいのです。
「おはようございます!」「こんにちは!」と、さわやかに声をかける。明るくはつらつと接する。それだけで声をかけられた人はうれしい。信頼関係も築かれる。
気持ちのよい「あいさつ」──私自身、近所でも、職場でも、また学会活動の中でも、きちんとあいさつをしようと決めて、実践してきました。
大田区山王のアパート「秀山荘」に引っ越した時も、「このたび越してまいりました池田です」「今後ともお世話になりますが、どうかよろしくお願い致します」と名刺を持って、近所へごあいさつに回りました。
多くの来客がありましたので、近隣の迷惑にならないよう配慮しました。妻がよく、気を配ってくれました。そうして結んだご近所との信頼関係は、貴重な人生の財産となりました。
友好拡大といっても、広宣流布といっても、すべて足もとから始まります。また、近隣の方々との交流というのは、自分の心を豊かにしてくれる。生活に温かみが出てくるし、何ともいえない安心感も生まれる。
来月から新社会人としてスタートするメンバーもいるでしょう。次回あらためて語り合いたいと思いますが、職場や地域で信頼を勝ち得ていく上でも、さわやかな「あいさつ」が基本です。
また、身近な人の行動などを見て、「素晴らしいな」と思うことがあるでしょう。その時に一言、声をかけることからも、対話は深まります。他人のいいところは、「素晴らしい!」「感動しました!」と率直に伝えることで、自分の心が相手の心に届いていきます。
さらに、相手を尊重し、その人から学んでいこうと質問していくことからも、対話は弾みます。
こちらが良い聞き手になれば、相手自身が気づいていない力まで引き出していけるものです。
──ただ、いろんな人がいますし、話が通じないことや、うまくいかないことも多いのですが。
名誉会長 今、対話の達人と言われる先輩たちも、最初はうまくいかなかったんだよ。大丈夫、心配はいりません(笑い)。
大事なことは、失敗してもクヨクヨしないことです。すべて勉強だと思って、また明るく朗らかに対話していけば、いいんです。
対話に限らず、何かしようとすれば失敗はあります。失敗は挑戦者の勲章です。恥ずかしく思う必要などありません。
若いんだから、悔しいこともステップにして、題目をあげて前進してください。「これから、どれだけ成長できるか」──それが、勝負です。
日蓮大聖人は「この法門を弘めてきたので、他の人とは比べものにならないほど多くの人と会ってきましたが、真にいとおしいという人は、千人に1人もいませんでした」(御書1418ページ、通解)とも仰せになられています。
御本仏の大きな御境涯から御覧になっても、本当に尊敬できる、信頼できる立派な人は少ないものだと、達観なされているのです。
祈り、動き、語る。また祈り、動き、語る。その積み重ねの中で、自分自身の生命が強く賢く大きくなっていくのです。やがて多くの人を包容し、正しく自在にリードしていける力が、必ず具わっていきます。
──池田先生は、世界中の知性の方々と文明を結ぶ壮大な対話を繰り広げてこられました。
発刊された対談集も、すでに60点を数えますね。今も、各界のリーダーと対談を重ねておられます。
名誉会長 すべて「戸田大学」の卒業生としての行動です。
御書には、「言葉というのは心の思いを響かせて、声に表したものをいう」(563ページ、通解)と仰せです。声に心が表れる。勇気を出して声を惜しまず、対話を続けていくことです。
「真の贅沢というものは、ただ一つしかない、それは人間関係の贅沢だ」
また、こうも言っています。
「他人の心を発見することによって、人は自らを豊富にする。人はなごやかに笑いながら、おたがいに顔を見あう。そのとき、人は似ている、海の広大なのに驚く解放された囚人に」
自分の世界に閉じこもっていれば、気楽かもしれないけれども、成長もない。孤立してしまえば、真の個性も光らない。
人と交流してこそ、人生を豊かにしていける。広々と心を開いて、つながっていくことです。
目の前の一人と胸襟を開いて語り合い、共々に生命尊厳の哲理に立って、より良き平和な社会の建設を目指す。この「一人」と「一人」のつながりの拡大によって、現実の世界を「仏国」「宝土」に変えていく。ここに「立正安国」の方程式があります。
孤独地獄が憂慮される現代に、この真実の人間のつながりを結び広げているのが、創価学会です。
敬愛する東北の同志を先頭に、青年の湧き立つ熱と力で、信頼のつながりを強めてください。
若き皆さんが、共々に生きる喜びを漲らせて、勝利の青春道を歩み、希望の新時代を開いていただきたい──これが、私の願いです。