小説「新・人間革命」人材城26  2012年5月10日

原谷永太も、弟の正太、正輝も、壮年幹部の顔を食い入るように見つめ、指導を聞いた。
「父親の借金をどうするかは、三人で話し合って決める問題だ。
どうするにせよ、同業者も、周囲の人たちも、みんな、君たちの姿を見ている。
君たちは、山本先生の弟子じゃないか! 師子王の子じゃないか! 今こそ、山本門下生の強さを、信心の実証を示す時なんだよ。
一つ一つの事柄に対して、誠実に、真剣に、『学会員は、さすがだな!』と言われるように対処していくんだ。
苦しい戦いになるだろうが、信心の初心に返って、腰を据えて、粘り強く頑張るんだ。
君たちは、『肥後もっこす』じゃないか!」
三兄弟の顔が、決意に光った。
帰途、車は田原坂の近くに差しかかった。
三人とも、かつて、この坂の上で、『何があっても広宣流布に生き抜こう』と誓い合った日のことを思い出していた。
今、まさに彼らの人生は、「越すにこされぬ田原坂」に差しかかっていた。
しかし、三兄弟の胸には、雨にも、嵐にも負けぬ、挑戦の闘魂が、赤々と燃え盛っていた。
人は困難に負けるのではない。闘魂を失うことによって、自らに敗れるのだ。
打ち倒され、地に伏しても、闘魂ある限り、人は立ち上がることができる。
法的には、彼らが父親の負債を肩代わりする理由はない。
でも、原谷三兄弟は、力を合わせて、息子である自分たちが、父親の借金を返済しようと心に決めた。
父親は信心しなくなっただけでなく、反対してきた。しかし、永太たちは、『創価学会の原谷兄弟』で知られている。
「借金は父親の問題だ」と言って取り合わなければ、多くの人が泣くことになり、自分たちの信用も、学会への信頼も欠いてしまうことになる。
彼らは、「いかなる乞食には・なるとも法華経にきずをつけ給うべからず」(御書一一六三p)との御聖訓を思い起こした。?学会に傷などつけてたまるか!?と思った。