小説「新・人間革命」厚田 29  2012年7月19日

山本伸一は、未来に思いを馳せながら、北海道の友に呼びかけた。
「戸田先生を顕彰するこの墓地公園には、国内にとどまらず、将来は、世界各地から、多くの人びとが来られるでありましょう。
どうか、その意味からも、この厚田に、世界の模範となる、麗しい理想的な人間共和の社会を築いていただきたい。
そのためにも、地域を大切にし、学会員であるなしにかかわらず、厚田の人びとを守り、友情と信頼の強い生命の絆を結んでいってください」
ホール・ケインは『永遠の都』のなかで、次のように綴っている。
「もし『人間共和』がいつ実を結ぶのかと聞かれたら、われわれはこう答えればよいのです。
たとえば、まずあそこにひとつ、ここにひとつ、あるいはあそこの国、ここの国といったように、世界が『人間共和』をつくりあげるような下地が出てくれば、従来の世界を支配してきた権力は、こんどは『人間共和』によって支配されるようになるだろう、と」理想は、どこか遠くにあるものではない。
自身の今いる場所で築き上げるものなのだ。
伸一は、言葉をついだ。
「最後に、ここを訪れた皆さん方は、『これは自分の庭である』との気持ちで散策し、気宇広大な思い出を刻んでください。
先祖への追善回向とともに、自らも蘇生して帰ってください。その意味から、この墓地公園を、?人間蘇生の憩いの広場?と意義づけておきたいと思います」
また、大きな拍手が広がった。
伸一は、さらに、こう付け加えた。
「皆さん! ともかく、何があろうが、驚いたり、臆してはいけません。どのような厳しい烈風に対しても、私が屋根となり、防波堤となっていきます。
皆さん方は安心して、この、創価の?心の故郷?で、楽しく、和やかに、人生の春風を満喫しながら、凱歌の人生を生き抜いていってください」