小説「新・人間革命」 勇将1 2013年 2月13日
厳の空に、微笑む星々が美しかった。
静かに波音が響き、夜の帳が下りた海には、船の明かりが点々と瞬いていた。
研修道場に到着した時には、既に日は沈んでいたが、彼は、海を見下ろす庭に立った。
「いいところだね……」
伸一は、四国総合長の森川一正に言った。
また、この辺りは『船隠』と呼ばれ、岬の陰になって見えないことから、平氏がたくさんの船を隠したところだそうです」
武士から公卿となって、?平家?を名乗り、『平家にあらずんば人にあらず』というほどの権勢を誇った平氏が、最後は滅ぼされてしまう。
当時の人たちの多くは、思いもしなかったことだろう。
権勢を手に入れ、それに慣れてしまうと、わがまま、贅沢になり、民衆の苦しみがわからなくなってしまう。
その時に人心は離れ、基盤が崩れ始めていく。だが、それに気づかない。実は、そこに、慢心の落とし穴がある」
森川は、真剣な顔で頷きながら言った。
「それは、遠い昔のことではなく、すべてに通じる話だと思います」
「そうなんだよ。リーダーというのは、常に民衆の心を忘れず、民衆のために自分を捧げていかなくてはならない。
そして、常に、一人立って、率先垂範の姿勢を示していくことだ。