小説「新・人間革命」 勇将2 2013年 2月14日
治承四年(一一八〇年)、源頼政は後白河法皇の皇子・以仁王の令旨を得て平氏討伐の兵を挙げた。
平氏の横暴に対して、武士をはじめ、人びとの不満はつのり、討伐の機は熟していたのだ。
しかし、源氏の蜂起には、発火点が必要であった。その役割を果たしたのが頼政であった。
一人の勇気ある決断が、時代転換の導火線に火をつけ、歴史の流れを変えたのだ。
勝利への執念は、あらゆる知恵を生み出す。執念あるところ、知恵の泉は枯れ果てることはない。
暴風が吹き荒れる夜半であった。海は猛り、激浪は白い牙をむいていた。しかし、追い風である。義経は、直ちに、用意した船で四国に渡ろうと決断する。
「敵は用心を怠る。この好機を逃すな!」
強風に尻込みする者たちを叱りつけ、わずか五艘の船で荒波に向かった。若き闘将の勇敢な行動が、武士たちの勇気を鼓舞した。