小説「新・人間革命」 勇将 10 2013年 2月23日
伸一は、皆の意見に耳を傾けながら、「支部制」の出発にあたっての大事なポイントとして、個人指導を強調した。
「皆が功徳に浴するためにも、人材を育成するうえでも、大切なのは個人指導です。
戸田先生の時代、先生が最高顧問を務める大東商工が入っていた市ケ谷ビルの一室を借りて、学会本部の分室とされた。
その部屋で、先生は、毎日のように、学会員の個人指導にあたられた。
当時の幹部たちは、そこに通って来て、先生の指導を真剣に見ていた。
いわば、見よう見まねで、個人指導という学会活動の基本を覚え、身につけていきました。
そうして指導力を磨いた幹部が、一人ひとりの会員と対話していった。
個人指導によって、先輩幹部と会員の皆さんが結ばれていけば、その絆は強い。大きな
会合での指導だけの関係や、組織的な結びつきだけでは、絆は弱い。本当の信頼関係、人間関係はつくれないからです。
長年、信心をしてきた方が、商売で行き詰まり、苦しんだ末に、指導を受けに行ったのは、タテ線時代の支部長だったという話を聞きました。
それは、現在の組織の絆が弱くなっていることを示すものといえます。
今、幹部の皆さんの、会合での指導と、個人指導の比率は、八対二ぐらいではないかと思う。
しかし、二対八を目標にしていけば、もっと人材が育ちます。学会も強くなっていきます。また、何よりも、幹部の皆さんが大きく成長していくことができます。
通り一遍の指導ではなく、しっかりと人間関係を結びながら、激励に激励を重ねていってこそ、本当の人間の連帯を築いていくことができる。
今、社会も、それを求めているんです」
相手の幸せを願う使命感から、心の絆が生まれ、真実の人間の連帯が築かれていく。