小説「新・人間革命」 勇将 33 2013年 3月22日

ここで山本伸一は、組織の中心者や幹部になると、さまざまな報告を受ける機会があるが、その際の心構えについて語った。
 「幹部であることによって、組織上、個人情報、プライバシーについて知り得ることもあるでしょう。
 しかし、私どもには、当然、守秘義務があります。
 家族や親しい友人に対しても、それを口外するようなことがあっては絶対にならないということを、まず確認しておきたい。
 また、世間では、自分の保身や偏見、嫉妬のために、讒言によって善人を陥れようとするといった話を、よく耳にします。
 それが社会の現実であるならば、学会のなかでも、人を陥れるために、偽りの報告をする人が出てこないとも限らない。
 いや、広宣流布の団結を破壊するために、魔は、そうした組織攪乱の動きとなって現れるともいえます。
 したがってリーダーは、人の報告をうのみにするのではなく、慎重に確認し、聡明に分析して、判断していくことが必要です。
 幹部が、すぐに口車に乗せられ、真面目に頑張っている人を排斥するようなことになれば、心ある同志が、いやな思いをするようになる。
 広宣流布は破られていきます。仏法の法理に照らして、その罪は重いと申し上げておきます。
 どうか、新支部長・婦人部長をはじめ、幹部の皆さんは、『鋭く真実を見極める英邁なリーダーであってください』『厳正、公平にして、心温かな指導者であってください』と心からお願い申し上げ、私のあいさつとさせていただきます」
 伸一が、幹部の在り方について、微に入り細をうがつように語ったのは、小さなことのように思える一つ一つの問題が、広宣流布の組織を蝕んでいくからだ。
 ウイルスは肉眼では見られぬほど、微小である。しかし、そのウイルスが繁殖し、病を引き起こし、人を死に至らしめることさえある。
 小事なくして大事はない。小さなことへの真剣な対応が大事故を防いでいくのだ。