小説「新・人間革命」 勇将 34 2013年 3月23日

 山本伸一は、本部幹部会での指導を終えると、「庵治の支部長! 長野支部長!」と、長野栄太を呼んだ。
 長野が立ち上がり、伸一の前へ来た。
 「長野支部長に、記念として『光桜』と揮毫させていただきましたので、それを、お贈りします」
 揮毫した書が長野に手渡された。
 伸一は、固い握手を交わしながら言った。
 「しっかり頼みます。勇将として立つんです。私も、全国の同志と共に、庵治支部を見ていますよ」
 長野は、決意に眼を光らせて、ぎゅっと伸一の手を握り返した。
 さらに伸一は、用意していたレイを手にすると、「庵治支部支部婦人部長さんは、いらっしゃいますか」と声をかけた。
 支部婦人部長は、松丘愛という庵治生まれ、庵治育ちの婦人であった。彼女は、会場後方にいたところ、突然、伸一に呼ばれたのである。
 「はい!」と言って、緊張しながら急いで前へ出て行った。
 「庵治の婦人部長さん。おめでとう! 支部長と力を合わせて頑張ってください」
 伸一は、こう言うと、持っていたピンクのレイを、松丘の首に掛けた。
 「ありがとうございます。頑張ります!」
 松丘は、瞳を潤ませながら答えた。
 伸一は、可能ならば、全国のすべての支部長と握手を交わし、励ましの揮毫をして贈りたかった。
 また、全支部婦人部長の首にレイを掛け、もろ手を挙げて讃嘆し、新しい出発を祝福したかった。
 この日、支部婦人部長の松丘は、本部幹部会の感動を皆に伝えようと、伸一から贈られたレイを手に、同志の家々を回った。
彼女の胸には、新たな決意が燃え、喜びが込み上げ、じっとしてはいられなかったのだ。
 決意即実践である。発心即行動である。
 一人ひとりとの、歓喜と躍動の励ましの対話が、心を結び、信心の血の通った創価の人間組織を創っていくのだ。