小説「新・人間革命」 勇将 35 2013年 3月25日

本部幹部会終了後、山本伸一は、副会長らと懇談した。その時、四国長の久米川誠太郎が切り出した。
 「香川のメンバーから、連日、『山本先生にお会いしに四国研修道場に行きたい』との声が届いております。
 もし、よろしければ、なんらかの会合をもっていただき、先生にお会いしていただければと思いますが……」
 「わかりました。では明日二十二日、集まれる方は集まってください。
 午前十一時から、勤行指導会という名称で、会合を開きましょう。急な連絡になるので、決して皆さんに無理をさせてはいけません」
 「明日は日曜日なので、多くの方々が集って来るようになると思います」
 「来られる方は、皆、呼んであげてください。
全室使えば、入れるでしょう。一度で無理なら、何度でも勤行指導会を行います。
 『会長が来ても、会えるのは一部の幹部だけではないか』といった、寂しい思いをさせたくないんです。
 もちろん、会合の会場には定員もありますから、なかなか全員が参加することは無理かもしれませんが、一人でも多くの方とお会いしたいんです。
 会合に出て歓喜し、決意を新たにしておられる方よりも、参加したくとも参加できずにいる方のことが、私は気がかりなんです。
 なんらかのかたちで励ましたい、声をかけたいというのが、私の気持ちなんです」
 リーダーにとって大事なことは、普段、なかなか会えない人のことを考え、励ましの手を差し伸べていく努力である。
 リーダーが会合中心の考え方に陥ってしまうと、会合の参加対象者だけを見て物事を考え、活動を推進していくようになってしまう。
 すると、その組織は、全同志の、また、万人の幸せを実現しようとする学会の在り方から、次第に離れ、結果的に組織そのものを弱体化させてしまうことになりかねない。
 光の当たる人より当たらぬ人に、湖面よりも水面下に眼を凝らして、皆を人材に育て上げていくことこそ、リーダーの使命である。