小説「新・人間革命」 勇将 37 2013年 3月27日

山本伸一の提案による勤行指導会は、前日の本部幹部会の録音テープを聴いたあと、午前十一時から開始された。
 伸一の導師で勤行したあと、副会長、理事長のあいさつがあり、会長指導となった。
 彼は、懇談的に話を進めた。
 「お休みのところ、大変にご苦労様でございます。皆さんとお会いできて嬉しい。
 今日は、子どもさんも大勢いらっしゃっておりますので、簡潔に話をさせていただき、あとは、研修道場内をゆっくり散策し、英気を養ってお帰りいただければと思います」
 そして、信心だけは純粋に、どこまでも永続していくことが大切であると訴えた。
 「御本尊の功徳には、祈りが直ちに利益となって現れる顕益と、目には見えないが、次第に福運を積み、大利益を顕現していく冥益とがあります。
 小さな子どもも、二十年、三十年とたつと、立派な社会人に成長する。
 若木もいつか、見事な大樹に育っている。音もなく降っていた雪も、気がつけば一面の銀世界をつくり出している
 ──このように、その時はよくわからなくとも、あとになってみれば、一切が大きく変わり、願いもすべて叶っているというのが、冥益なんです。
 私は、信心して三十年が過ぎました。私の周囲にも、さまざまな悩みを抱え、苦闘しながら、信心に励む同志がたくさんいました。
 いったい、いつになったら宿命転換ができるのだろうと思ったこともありましたが、今は皆、本当に幸せな境涯になっています。
 そうした例を、私はこれまでに、何万、何十万と見てきました。強盛に信心を貫くならば、なんの心配もありません。
 どうか、自信をもって、安心して、信心を持続し抜いていただきたいんです」
 さらに彼は、「信心強盛とは、いかなる人か」と参加者に問いかけ、こう語った。
 「信心といっても、すべて豊かな常識のなかにある。したがって、信心強盛な人とは、最も常識豊かな人であります」