小説「新・人間革命」 勇将 38 2013年 3月28日
山本伸一は、二十一世紀の広宣流布の伸展は、仏法者の常識豊かな行動を通して、人格への共感、信頼、尊敬を勝ち取っていくなかでなされていくものであると確信していた。
「信心即人格」であり、そこに、信仰のすばらしさの証明もある。ゆえに、常識豊かな行動を強調し、次のように語ったのである。
「信心のことで、絶対に争いなどを起こしてはなりません。誰からも信頼されていくための信心なんです。
ですから、仕事には、人一倍、真剣に力を注ぎ、工夫を重ね、社会で見事な実証を示しきってください。
唱題を根本にした、その絶えざる向上と前進の姿勢があってこそ、諸天諸仏も守り、功徳を受けていくこともできるんです。
また、交通事故や火災等は、絶対に起こさないと決意して、安全運転や注意、点検を怠らないでください。
皆さんの、ますますのご健康と福運増進をご祈念申し上げ、あいさつといたします」
それから伸一はピアノに向かい、「つたないけれど、記念に演奏させていただきます」と言って、「さくら」などを披露した。
勤行指導会の会場となった講堂を出た彼は、別の部屋に集っている人たちのところへも足を運んだ。
伸一は、自分に言い聞かせた。
“会員の方々と自由に会うことのできる機会は限られている。
この時を逃してはならない。今が勝負だ! 来られた方、全員とお会いし、魂を注ぎ込む思いで励まそう。皆が永遠に忘れることのない出会いにしよう!”
別室でも皆に声をかけ、握手を交わした。
「わざわざお越しいただき、ありがとう! 皆さんのことは忘れません。お一人お一人を、瞼に焼き付け、生命に刻んで帰ります。また、お会いしましょう」
話し続けたせいか、喉が痛かった。
しかし、声を振り絞るようにして語った。
「信心をしていくうえで大切なのは、勇気ですよ。勇気が人間を師子に変えます。勇気があってこそ、境涯革命ができるんです」