小説「新・人間革命」 奮迅 4 2013年5月8日

一月二十三日、杉並文化会館で本部幹部会の再聴が終わったあと、方南支部結成大会の大成功へ向け、各部の大ブロック長が集って、打ち合わせが行われた。
 この席で、支部歌を作って、発表することも決まった。
 結成大会は四日後である。有志が、まず作詞に取りかかり、額を合わせて考えた。
 「歌詞には、『方南支部』という名前を入れよう」「座談会の情景も入れたい」など、いろいろと意見が出たが、歌詞となる言葉は、なかなかうまく紡ぎ出せなかった。
 歌詞は、翌日までに完成させなければならない。あれこれ知恵を絞ったが、結局、二番までしかできなかった。
 「時間がない。二番までの歌にしよう」ということになった。『大英断』である。
 次の日の夜、音楽大学を卒業した女子部員が、一晩がかりで作曲し、二十五日の夜から合唱の練習に入った。
 各大ブロックでは、支部結成大会への参加を呼びかける激励も、任用試験受験者の勉強も盛んに続けられていた。
 さらに、結成大会の大成功を祈念して、唱題の渦が地域に巻き起こっていったのである。
 一月二十七日、山本伸一は、午後四時半に杉並文化会館に到着した。直ちに、支部の代表に贈ろうと、和紙に「友光桜」「友桜」「光桜」などと揮毫していった。
 方南の幹部たちは、早くから文化会館に待機していた。伸一が到着すると、皆、夢を見ているような気がし、自分の頬をつねってみようとさえ思った。
 『次は、どこまで結集できるかだ!』 彼らは、心で題目を唱えながら、合唱団などのリハーサルの様子を見て回った。
 皆、全力を出し切ったという実感があった。しかし、『安心して気を緩めてはならない』と、自分に言い聞かせていた。
 安心は油断を生み、油断から失敗が生ずるからだ。断固、勝利しようという一念が強ければ強いほど、人は慎重になるものだ。