小説「新・人間革命」 奮迅 37 2013年6月17日

 二月十九日午後二時半、信越男子部幹部会の会場である立川文化会館に、山本伸一の闘魂に満ちあふれた力強い声が響いた。
 「『さあ、出発しよう! 悪戦苦闘をつき抜けて!
 決められた決勝点は取り消すことができないのだ』(注)
 これは、ホイットマンの詩集『草の葉』にある、有名な一節であります」
 集った青年たちは、伸一の指導の一切を吸収するのだとばかりに、眼を輝かせて、耳を澄ましていた。
 このホイットマンの言葉は、伸一が若き日から深く心に刻み、暗唱してきた詩であり、これまでに何度となく、多くの青年たちに伝えもしてきた。
 「さあ、出発しよう──とは、過去にとらわれるのではなく、晴れやかに、未来をめざして生きる青年の姿です。
 『いよいよ、これからだ』という日々前進の心意気です。間断なき挑戦の気概です。
 信心は持続が大切ですが、持続とは、単に、昨日と同じことをしていればよいという意味ではありません。
 それでは惰性です。『さあ、出発しよう』と、日々、新たな決意で、自分を鼓舞して戦いを起こし続けていくのが、本当の持続の信心なんです。
 毎日、毎日が、新しい出発であり、勝利の日々であってこそ、人間革命も、人生の大勝利もあることを知ってください。
 悪戦苦闘──これは、広宣流布のため、自身の人生の勝利を飾るために、必ず経なければならない道程なんです。
 苦労しなかった偉人はいません。偉業を成した人は、皆が、迫害、非難、中傷にさらされ、ありとあらゆる苦難と戦っています。
 創価の大道を開いてくださった初代会長の牧口先生も、第二代会長の戸田先生も、軍部政府の弾圧と命を懸けて戦われています。
 私たちは、その師子の子どもです。勇んで悪戦苦闘のなかに身を置き、それを突き抜けていくなかに、自身の人間革命があるんです」