小説「新・人間革命」 奮迅 38 2013年6月18日

人生は波瀾万丈であり、悪戦苦闘しながら進んでいかなければならない日々もある。
 しかし、その試練に挑み立つ時、自らが磨かれ、鍛えられ、強く、大きく、成長していくのである。
 山本伸一は、一段と強い語調で語った。
 「悪戦苦闘は、われらにとって、避けがたき宿命的なものです。
 しかし、決められた決勝点、すなわち、われらの目的である広宣流布、また、一生成仏、人間完成、福運に満ちた勝利の実証を示すという、人生の決勝点は取り消すことはできない。
 たとえば、ひとたび飛行機が飛び立ったならば、飛び続けなければ次の目的地に着くことはできません。
  その途中には、強風もある。雷雲も発生するかもしれない。
 ましてや、われわれは、地涌の菩薩の聖業であり、人生の最極の目的である広宣流布のための戦いを起こした。
 悪戦苦闘を覚悟するのは当然です。
 私は、皆さんが苦闘を誇りとして、信心の確信と歓喜を胸に、凜々しく進んでいかれることを、日々、真剣に祈っております」
 悪戦を経た数だけが、自身の経験の輝きとなる。苦闘の数だけが力の蓄積となる。
 苦労し、苦労し抜いてこそ、真実の指導者に育つことができるのだ。
 伸一は、さらに、戸田城聖の「男は、それなりにトップに生きよ」との指導を引いて、それぞれの今いる分野にあって、トップをめざすことの大切さを訴えた。
 次いで、学会の草創期、伸一ら数人の青年が核となって、広宣流布の火ぶたが切られたことを述べ、その活動は、文字通り、不眠不休の激闘の歳月であったことを語った。
 「時代は刻々と移り変わっていきます。
 しかし、広宣流布という人間の生命の根底から変革していく宗教革命は、生命を賭する覚悟がなくては決して成就できるものではない。
 つまり、何があろうが、信心の火だけは、盛んに燃え上がらせていくことです。
 そのうえで、民衆の信頼と理解を勝ち得ていくことが、必要不可欠なのであります」