小説「新・人間革命」 奮迅 39 2013年6月19日

山本伸一は、ここで、創価学会の運動の意義に言及していった。
 「事実上、学会は日本一の大教団となり、職業も年齢も異なる、まことに多種多様な人びとが集っております。
 そのなかには、すぐに感情的になってしまう人や、非常識な人もいるかもしれない。
 すべての人を包容し、最も悩み苦しんでいる人たちに根底から光を当てて救済し、幸福を実現してきたのが創価学会です」
 かつて、信心を始めた会員の多くは、それぞれが深刻な問題をかかえていた。
 その個々人の問題が、あたかも学会全体の問題であるかのようにすり替えられ、非難中傷を浴びせられたこともあった。
 それは、学会が、社会の底辺にあって苦悩する人びとに救済の手を差し伸べ、宗教の使命を果たし抜いてきた証明ともいえよう。
 「私どもが担ってきたことは、最高に尊い、仏の使いでなければでき得ぬ労作業でありました。
 仏の聖業を、仏に代わって行ってきた。だからこそ、経文に照らして、容赦のない嵐が競い起こるのは、必然なんです。
 広宣流布は激浪の海を行かねばならない。その覚悟を定めなければ、何かあれば、すぐに揺らいでしまう。
 この根底の一念というものを、どうか堅固に確立していただきたい。
 そのうえで、もし、非があれば、非として認め、反省し、前進していくことです。
 決して、独善的であってはならない。揺るがざる信念と理不尽とを混同してはなりません」
 不屈の信念をもって、常識豊かに、忍耐強く、社会の信頼を勝ち得ながら前進していくなかにこそ、広宣流布の広がりはある。
 伸一は、凜とした声で訴えた。
 「広宣流布の前進ある限り、今後も、さまざまな問題が生ずるかもしれない。その一切の責任は、私にあります。
 戸田先生も、学会に起こった諸問題に対して、『罪深き私のゆえ』と、よく言われていた。私も、全く同じ思いであります。
 諸君は、安心して、伸び伸びと、後継の大道を歩んでいってください」