小説「新・人間革命」 奮迅 40 2013年6月20日

山本伸一は、信越男子部幹部会に集ったメンバーに、期待と信頼の眼差しを注ぎながら、言葉をついだ。
 「皆、さまざまな境遇で、苦労し、呻吟しながら生きている。それが、現実です。絵に描いたような華やかな人生なんてありません。そんなものは幻想です。
 そのなかで、現実に根を張って、着実に自身を開花させていくんです。
 時には、『自分なんか駄目だ!』と卑下したり、『なんで自分には光があたらないのだ』と、絶望的な思いをいだくこともあるかもしれない。
 しかし、諸君の人生は長い。決して焦ってはならない。焦って、地道な努力を怠れば、必ず、どこかで行き詰まってしまう。
 人生の勝負は、五年や十年で決まるものではありません。一生で判断すべきです。さらに、三世の生命という根源的な尺度で、ものを見ていくことです。
 特に、行き詰まった時には、もう一度、この次元から自分を見直し、勇気を奮い起こしていただきたい。
 人生の勝利は、持続の信心のなかにこそある。
 そして、当面の課題、戦いに、全力でぶつかり、今を勝つことです。それによって、自分の苦悩を一つ一つ乗り越え、自身の境涯を開いていくことができる。
 すべての広宣流布の活動は、自分が幸福になり、人生に勝利するためにある。
 苦労した分は、すべて自分の功徳、福運となっていくんです。
 いいですか! 今、何をするかですよ。時は決して待ってはくれない。今、立つんです。
 最後に、もう一度、あのホイットマンの詩の一節を読み上げたい。
 『さあ、出発しよう! 悪戦苦闘をつき抜けて!
 決められた決勝点は取り消すことができないのだ』(注)」
 爆発的な大拍手をもって、信越男子部幹部会は終了した。
 以来、「さあ、出発しよう!」は、信越の男子部員だけでなく、全学会青年部の日々の決意となり、合言葉となっていった。