激闘46  2014年5月15日

宮中家を訪問した山本伸一と峯子は、仏間になっている和室に通された。
伸一は、家族の一人ひとりに声をかけ、報告に耳を傾けていった。
主の宮中栄蔵は、この家は檜造りであり、木を切り出すところから、綿密に計画して建てたことを伝えた。
「そうですか。すばらしいお宅です」
伸一が言うと、栄蔵は、誇らかな笑みを浮かべた。伸一は、さらに言葉をついだ。
「私は、全国に会館を建てることを計画して、そこに情熱を傾けてきました。
今、全国各地に、堂々たる文化会館が誕生し、会員の皆さんは、本当に喜んでくださっている。
それらの文化会館を中心に、広宣流布は飛躍的な伸展を遂げております。それが、私の最高の喜びであり、誇りなんです」
それを聞いた栄蔵は、ハッとした。そして、にわかに、恥じらいを覚えた。
山本先生は、広宣流布のために全国の会館建設を念願し、実現されてきた。
それに比べ、私は、少し凝った自分の家を建て、会場としても使ってもらっているだけで満足している。っと、広宣流布に尽力しなければ……
人びとの幸福のために尽くす人は、自分の幸福のためだけに生きる人より、はるかに幸せを実感することができる。
また、人びとのために献身することに勝る美しい行為はない。
伸一は、栄蔵に、ねぎらいの言葉をかけた。
「ご主人が、こうして立派な家を建て、奥様を全面的にバックアップしてくださっているから、奥様は縦横無尽に活躍することができるんです。
心から感謝申し上げます」
「いいえ、とんでもないことです。妻は信心に目覚めることによって、人間革命できたんです。
ひとえに学会のおかげです」
──栄蔵の妻・直子は、何不自由ない家庭に育ち、一九五三年(昭和二十八年)に、彼と結婚した。
夫の実家は、大島紬を専門に扱う呉服問屋であり、栄蔵は、そこの専務取締役であった。
結婚後も、暮らしは豊かであり、長男、長女と子宝にも恵まれた。