激闘64 2014年 6月5日

山本伸一は、質問した婦人に視線を注ぎながら、「おわかりになりますね」と、確認した。婦人が頷くのを見て、言葉をついだ。
「自分の性格は、大事な自分の個性ですから、人と比べて卑下したり、羨ましがったりする必要はないんです。
梅は桜になることはできないし、桜も梅になることはできません。大切なことは、自分は自分らしく、光り輝いていくことです。信心を貫き通していくならば、人が真似ることのできない、自分らしい最高の魅力を発揮していくことができるんです」
「はい。わかりました!」
婦人は、明るく、元気な声で答えた。
次々と質問の手があがった。
大学を卒業したが、就職が決まらずに悩んでいるとの男子部員の質問もあった。聡明な女性とは、どういう女性かとの、女子部員の質問もあった。二年前に交通事故で三歳の子どもを亡くし、苦しみが癒えないと訴える壮年もいた。
伸一は、その一つ一つの質問に対して、真心を尽くし、大確信をもって答えていった。
座談会こそ、励ましの花園である。何ものにも負けぬ強き生命を触発する、真剣勝負の道場である。そして、一人ひとりの発心を促す旅立ちの舞台である。
彼は、山口の幹部に、いや、全国の幹部たちに、本当の座談会の姿を学んでほしいとの思いから、自ら手本を示したのである。
山本伸一は、五月十九日の午後、この日が学会として定めた「山口の日」にあたることから、県の日を記念する勤行会に出席した。
そして、午後二時過ぎに山口文化会館を発った。山口でも、滞在中に二十余人の代表に、句や歌を詠み、贈っている。 
ある草創の功労者には、「苦楽をば 夫婦で分かたむ 広布旅」と。また、ある男子部の幹部には、「丈夫は 今や立ちゆけ ふたたびの 妙法維新の 旗をかかげて」と、満腔の期待を込めて励ましの歌を認めた。