小説「新・人間革命」広宣譜22 2014年 12月12日

七月八日の夕刻、山本伸一は、東京・練馬区の北町地域の支部長・婦人部長、区幹部ら十数人を招いて、港区内で懇談会を行った。
伸一は、集ったメンバーに、温かい視線を注ぎながら語り始めた。
「いちばん苦労した人を、いちばん讃え、励ましたいというのが、私の真情であり、信念であります。また、最も苦労し、不幸に泣いてきた人が、最も幸せになれるというのが、仏法です。
私は、そうした思いで、北町の皆さんを見守ってきました」
北町一帯では、三、四年前に、御本尊に不信をいだいた一部の幹部らが、組織を攪乱するという出来事があった。
それに翻弄されて、学会を離れていった人もいたのである。
そのなかでメンバーは、互いに励まし合いながら、試練の嵐を乗り越えてきた。
そして、この一九七八年(昭和五十三年)一月、広布第二章の支部制発足とともに、希望の大行進を開始したのである。
伸一は、言葉をついだ。
「北町の皆さんは、荒れ狂う怒濤に敢然と挑み、障魔を粉砕し、大きな飛躍を遂げられた。弘教も、これまでにないほど、大きく進んでいると伺っております。
まさに、見事な変毒為薬の姿であり、諸天諸仏も讃嘆されていることは間違いありません。
そこで、皆さんを賞讃するために、北町の支部歌を作詞作曲させていただきました。
私が作った、全国で、ただ一つの支部歌です」
参加者の顔が光り、拍手が起こった。
カセットデッキのスイッチが入れられ、軽快な調べが流れ始めた。
 
 一、あの緑 この天地
   私もあなたも 歩く道
   朝日の功徳を 身にあびて
   共に語らん この広場
 
 伸一は、子どもからお年寄りまで、自然に皆が口ずさみたくなるような、明るく軽やかなテンポの歌をと考え、作詞作曲したのだ。