小説「新・人間革命」広宣譜32 2014年 12月25日

山本伸一は、青年に作曲のアドバイスをしながら、歌詞にも手を加えていった。
一番の四行目「愛する関西 この姿」は、「愛する関西 勇み立て」に、二番の一行目は、「我等の誇り 金の城」としていたが、「我等の誉れ 錦州城」とし、二行目の「常勝の道 晴ればれと」を「常勝
の空 晴ればれと」とした。
曲作りでは、結びとなる四行目をどうするかで、青年も、伸一も、悩みに悩んだ。
呻吟の末に、躍動感に満ち、力強い抑揚のある歌に仕上がった。
笑みを浮かべて、伸一は言った。
「まず、これを関西に送ろう。
曲もよくできたと思う。点数をつければ、九十八点だね。あとの二点は、関西の同志の魂なんだよ。歌に、関西の同志の魂が入った時に、百点満点になる」
手を加えた歌詞は、関西に伝えられた。
関西からは、大阪で記念の幹部会を行う七月十七日付の方面版に、歌詞と楽譜を発表したいと言ってきた。
伸一は答えた。
「記念の幹部会で大合唱するために練習したいだろうから、発表することはかまいません。しかし私は、さらに、推敲に推敲を重ねるつもりです。
したがって歌詞にも曲にも、手を入れることになるかもしれません」
「7・17」前日の七月十六日、伸一は、朝から、新しい気持ちで、もう一度、曲について真剣に検討し始めた。
翌十七日は、午後二時発の便で、空路、大阪へ向かう日であったが、この日も、出発直前まで推敲を続けたのである。そして、同行する幹部に、楽譜と歌詞を手渡して言った。
「『関西の歌』は、リズムもいいし、このままで直すところはありません。これでいきます。皆が待っているだろうから、その旨、関西に伝えてください」
中途半端な仕事は、泡のようにはかない。「もう、全生命を絞り尽くした」といえる仕事であってこそ、本当の仕事といえる。