広宣譜 67

山本伸一が岡山で作詞した新高等部歌に曲がつけられ、「正義の走者」として「聖教新聞」紙上に発表されたのは、8月1日のことであった。そして、8月の3日午後、第11回高等部総会が行われた東京・立川文化会館に、21世紀へと旅立つ鳳雛(ほうすう)たちの誓いの熱唱が、こだましたのだ。
伸一は、この日の午後2時、信濃町聖教新聞社で来賓(らんひん)を迎えるため、高等部総会への出席は難しかった。し
かし、「ひと目でも会って、新出発を祝福しよう」と会場を訪れ、開会前にスピーチしたのだ。
彼は、仏法こそ、世界平和への根本の力であり、時代は仏法を渇望(かつぼう)していることを述べたあと、仏法者の使命に言及していった。
「仏法は、無限の可能性を開く法理です。したがって、その仏法を持った諸君には、行き詰まりも、絶望もない。社会の前途に暗雲が垂れ込め、希望なき時代が訪れたとしても、自らの力で希望をつくり、その希望を人びとにも与えきっていける勇者に育っていってください。そのために諸君がいるんです。
真に偉大なる人間とは、ひとたび決めた信念を、生涯貫いていける人のことです。人間の真価は、苦難に直面した時にわかるともいえます。その時に、決して微動だにすることなく、広宣流布の大道を、世界平和の大道を、民衆の幸福の大道を、誇らかに走り抜いてください。諸君の躍り出る本舞台は21世紀です。その来るべき新世紀を、断固として凱歌の世紀にしてほしいんです。
『妙法のメロス』たる王子・王女の皆さんに、私は未来を確かに託しました!」

立川文化会館を後にする伸一の耳に、高等部員たちの誓いの歌声が響いた。
「我れ今あとを 継がんとて……」
彼は、微笑みを浮かべ、大きく頷(うなず)いた。
「頼むよ! 頼むよ! 私は嬉しい。君たちのために全力で道を開くよ。戦い抜くよ」
立派な後継者を育てた人が勝利者である。後継の人こそが、いかなる財宝にも勝る創価の至宝である。

   (2015年2月10日付 聖教新聞