小説「新・人間革命」大道 1 2015年2月11日

われらは詠い、われらは歌う!
広宣流布の天空には、壮大なロマンの、詩と歌の虹が輝く。
  
 私は、なぜ詠うのか──。
 悲哀に沈む友の心に、希望の火をともし、
 勇気の炎を燃え上がらせるために!
 あの胸に、この胸に、
 人間讃歌の音律を響かせ、
 共に正義の大道を歩み抜くために!
  
 私は、なにを詠うのか──。
 無限の力を秘めたる人間の可能性だ!
 吹き荒れる試練の嵐に敢然と立ち向かい、
 「苦悩」を「歓喜」に変え、
 人生の凱歌を轟かせる
 庶民のヒーロー、ヒロインの崇高な姿だ!
 泥沼に咲く蓮華のごとく、
 清らかにして、美しく、強き、その魂だ!
 大宇宙をも包み込む
 広大無辺な、その心の豊かさだ!
  
 人間!
 おお、人間!
 なんと尊く、気高きものか!
 私は、合掌する思いで、
 わが友の人間革命の勝利劇を詠い続ける。
  
中天に燃える、夏の太陽が眩しかった。
青き島々を浮かべ、銀波が躍る瀬戸の海を、高速船は滑るように走っていく。
吹き渡る風が頬に心地よい。
一九七八年(昭和五十三年)七月二十四日午後一時、山本伸一たち一行は、移動時間を短縮するため、チャーターした高速船「キングロマンス」号で、岡山から香川県庵治町の四国研修道場へ向かった。
彼の四国訪問は、この年二度目であった。
伸一は、峯子に言った。
「四国から大人材を育てるよ。学会の宝は人だもの。人が育ってこそ広宣流布は進む。
皆と会い、同じ志の勇者をつくるよ」