小説「新・人間革命」大道3 2015年 2月13日

庵治の浜辺は黄昏を迎えていた。
歓喜と誓いの合唱が終わると、山本伸一は笑みをたたえながら、マイクに向かった。
愛郷心みなぎる、意気盛んな皆さんの熱唱に、四国広布の新たな夜明けの歌を聴きました! 希望の光を見ました!」
この研修で彼は、広宣流布という大目的に生きる信仰の世界にこそ、最高の歓喜と人生の醍醐味があることを訴え、新しい出発への決意を促した。
研修が終わると、彼は、真っ先に参加者の輪のなかに飛び込み、握手を交わし、肩を抱きかかえ、励ましていった。同行の副会長や四国の方面幹部、県幹部も彼に続いた。
伸一の顔にも、体にも、汗が噴き出した。
思えば、半年前に四国を訪問した折、彼が寒風の中、行く先々で幹部に語り、行動をもって示したのは、「仏を敬うがごとく、会員の皆さんに尽くせ」ということであった。
会員奉仕こそ幹部の基本姿勢であると叫び抜き、四国の天地に幹部革命の烽火を上げたのだ。
仏法とは、慈悲の教えである。そして、それが、人間の振る舞いとなって体現されてこそ、現実に価値をもたらす。
日蓮大聖人は、「教主釈尊の出世の本懐は人の振舞にて候けるぞ」(御書一一七四p)と仰せである。
人びとを敬い、幸せの大道へと導き、励ます振る舞いのなかに、仏法者の生き方があり、そこに仏道修行もあるのだ。
幹部の意識革命、人格革命がなされ、「慈悲」という生き方が確立されていけば、それは、全会員に波及し、励ましの人の輪は、地域、社会に幾重にも広がっていこう。
そして、現代にあって分断されつつあった人と人との絆は、復活していくにちがいない。
広宣流布とは、見方を変えれば、仏法の法理を各人が、自己自身の生き方、哲学として体現し、信頼の絆をもって人びとと結ばれていくことであるといってよい。
その輪を広げ、人間を尊び、守り合う、生命尊厳の時代、社会を築き上げていくことが、創価の同志の重要な使命となる。