小説「新・人間革命」大道16 2015年 2月28日

山本伸一は、さらに、長井夫妻に語った。
「四国の歌もできたので、今度は、島の先駆として、小豆島の歌を作ってはどうでしょうか。私も応援します」
それから四国長の久米川誠太郎に言った。
「私は今年、もう一度、四国に来ます。四国が大発展するための、盤石な礎を築きたい。いよいよ四国の時代です」
伸一が、島の大勢の同志に見送られ、土庄港を発ったのは午後四時五十分であった。滞在時間は、わずか二時間半にすぎなかった。
しかし、人びとの胸には、小豆島広布に生きる誇りがみなぎり、決意が燃え盛っていた。
伸一の乗った船が桟橋を離れると、見送りに来た人たちが、口々に叫んだ。
 
「先生! また来てください!」
「頑張ります! 見ていてください!」
「小豆島を、必ず福運の島にします!」
その声が、瀬戸の青空に溶けていく。
 
伸一も、盛んに手を振って応えた。桟橋が見えなくなるまで、いつまでも、いつまでも手を振り続けた。
彼は、この年の秋、「小豆島の歌」を作詞して島の同志に贈った。作曲を担当したのは香川県の女子部員であった。
「オリーブ薫る 小豆島」から始まるこの歌には、幸の花咲く福運島の建設を願う、伸一の思いがあふれていた。
 
 「二、萌ゆる緑の 幸の島
    願う我らの 声澄みて
    見よや爛漫 この島に
    功徳の宝樹 開きけり」
 
 「四、朝日も夕日も 絵のごとく
    この海原は 世界まで
    祈る響きは 通わんと
    ああ愛するは 小豆島」
 
一つの島がどれだけ栄え、人びとが幸せになるか――それこそが、広宣流布の縮図であり、実像である。
そして、そのモデルが出来上がれば、日本中、世界中に広がっていく。ゆえに伸一は、この小豆島を盤石にしていくために、全精魂を注いだのである。