小説「新・人間革命」大道 19 2015年3月4日

中部文化会館での「中部の日」記念幹部会の前、山本伸一は東濃圏の中心者と会った。
この圏では、宗門の問題だけでなく、怨嫉問題などもあり、皆が喜んで団結しているとは、言いかねる状態であった。
伸一は、同席した中部本部長の田山豊隆に視線を向けた。
「東濃の皆さんは、宗門をはじめ、さまざまな問題に苦しみながら、必死になって攻防戦を続けてくださっている。
苦労しながら頑張り抜いておられる。
今は、どんなに辛くとも、仏法という太陽の光を浴びれば、やがて、正邪も、善悪も明らかになっていきます。
したがって、何があっても一喜一憂するのではなく、創価の師子の信念をもって、御本尊とともに、学会とともに生き抜いていくよう訴えることです。
明日、私は東濃に行きます。そこで、東濃創価学会の結成十四周年を記念する勤行会を行いましょう。
急ですが、来られる方は、来てください。皆、仏子の方々です。
悔しい思い、悲しい思いをしながら、歯を食いしばって、戦ってこられた地涌の菩薩の方々です。
私は、そうした皆さんに仕える思いで、最大に讃え、励ましたいんです。
明日二十八日は金曜日で平日ですから、仕事の方も多いでしょう。勤行会は夕刻、皆さんが集まって来られたら開始します。
仕事を終えて駆けつけて来る方のために、二度でも、三度でも行います。
地元の皆さんには、『夕方から、会長も出席して勤行会を行います。都合のつく方は東濃文化会館にお越しください。
ただし、無理をする必要はありません』とお伝えください」
それから伸一は、強い語調で言った。
「幹部は、最も皆が苦しんでいるところへ、自ら真っ先に足を運んで激励するんです。
幹部に、その姿勢がなくなれば、それは、もはや官僚主義であり、組織は崩れていきます」
記念勤行会開催の連絡は、その夜、電光石火、組織の隅々にまで流れた。
「山本先生が、東濃に来られる!」
皆、逸る心を抑え、翌日の勤行会を待った。