小説「新・人間革命」 勝利島 10 2015年 7月31日

 
山本伸一は、沖縄のメンバー一人ひとりに視線を注ぎながら、話を続けた。
「私は、沖縄の皆さんが、自ら行動を起こし、学会本部に来られたということが、最高に嬉しいんです。
誰かが、何かしてくれるのを待つという受け身の姿勢からは、幸福を創造していくことはできない。
そうした生き方では、誰も何もしてくれなければ、結果的に悲哀を募らせ、人を憎み、恨むことになってしまう。
実は、そこに不幸の要因があるんです。
仏法は、人を頼むのではなく、自らが立ち上がって、新しい道を開いていくぞ!という自立の哲学なんです。
自分が変わることによって、周囲を、社会を変えられると教えているのが、仏法ではないですか!
いよいよ皆さんが、その自覚に立たれて、行動を開始した。
本格的な沖縄の広布第二章が始まったということです。発迹顕本です。
私は、沖縄の前途を、未来の栄光を、心から祝福したいんです。おめでとう!
では、記念に写真を撮りましょう。そのために来ていただいたんです」
記念撮影は、四グループに分かれて行われた。
伸一は、先に女性二グループと、続いて男性二グループと記念のカメラに納まった。
撮影が終わると、彼は尋ねた。
「皆さんは、全員、今晩の離島本部の総会には、参加されるんですね」
「はい!」と元気な声が、はね返った。
「私も、出席させていただきますので、また、お会いしましょう」
歓声があがり、笑みの花園が広がった。
伸一は、創価婦人会館を出て歩き始めた。
本部周辺の道には、離島本部の総会に参加するメンバーが行き交っていた。彼は、会う人ごとに、声をかけ、あいさつを交わした。
「遠いところ、ご苦労様です」「総会には伺います」「ようこそ。お名前は?」
――一瞬の出会いが、一言の励ましが、その人の一生の原点になることがある。
励ましの声をかけることは、心に光を送ることだ。
 
■語句の解説
◎発迹顕本/「迹を発いて本を顕す」と読む。仏が仮の姿(垂迹)を開き、その真実の姿、本来の境地(本地)を顕すこと。