小説「新・人間革命」 勝利島12 2015年 8月3日

山本伸一は、懇談の席で、離島の婦人たちの近況に、じっくり耳を傾けた。
多くの島の暮らしは、決して豊かとはいえない。
島を出て、大都市に働きに出る人も後を絶たない。
そのなかで、学会員は、人びとの幸せと島の繁栄を願い、ひたすら信心に励んできたのだ。
伸一は、力強い声で語り始めた。
「皆さんが、泣くような思いで広布の道を開き、どれほど苦労されてきたかを、私は、よく知っています。
さまざまな島の方々から、たくさんのお便りもいただいています。
また、全国各地を訪問するたびに、離島から来られた方とは、できる限りお会いして、懇談するようにしてきました。
皆さんは、偶然、それぞれの島に暮らしているのではない。
日蓮大聖人から、その島の広宣流布を託され、仏の使いとして、地涌の菩薩として、各島々に出現したんです。
仏から遣わされた仏子が、負けるわけがありません。
不幸になるわけがありません。
ですから、どんなに苦しかろうが、歯を食いしばり、強い心で、大きな心で、勇気をもって、頑張り抜いていただきたい。
私は、離島にあって、周囲の人たちに信心を反対されながらも、着実に信頼を勝ち取り、広宣流布の道を開いてこられた方々こそが、真正の勇者であり、真実の勝利王であると思っています。
学会のいかなる幹部よりも、強盛な信心の人であり、創価の大英雄です。
今日の総会に出席させていただくのも、その皆さんを賞讃するためであり、それが、会長である私の務めであるからです」
島で広宣流布の戦いを起こすのは、決して、生易しいものではない。
島には、それぞれの風俗、習慣、伝統があり、それを人びとは、宗教を考えるうえでも尺度としてきた。
そのなかで学会員が誕生する。
島民は、初めて、自他共の幸福と社会建設をめざす創価学会という躍動した宗教と出合う。
当然、それは、これまでの宗教の範疇に収まるものではない。
それゆえ、誤解、偏見が生じる。