小説「新・人間革命」勝利島14 2015年 8月5日

夏季地方指導の最終日に開かれた座談会の帰り道、島の若者たちが鍬や鎌を持って道端に群がり、学会員に罵声を浴びせた。
学会員が次々と誕生していくことを快く思わぬ、地域の有力者の差し金であった。
学会の幹部を家に連れてきたことで、家主から、家を出るように言われた学会員もいた。
有力者たちは、さらに学会攻撃の作戦を練った。そして、それまで集落費から出していた神社への寄付金を、各戸から、直接集めることにした。
それに難色を示した学会員は、集落に非協力的であり、秩序を破壊したとして、除け者にされたのである。
会員のなかには、集落での一切の付き合いを断たれ、村有地の借地権を奪われた人もいた。
島の産業は、漁業と農業で、農業のなかでも葉タバコが大きなウエートを占めていた。学会員は、その組合からも除名された。
近野春好は、農業を営んでいたが、葉タバコ生産の組合から締め出されたために、野菜などの栽培に切り替えた。
しかし、島では、誰も買ってくれなかった。
やむなく、他の島に売りに行き、生活を支えた。
また、学会員には、どの店も商品を売ってくれなかった。
電報で連絡を受けた支部の男子部幹部や、九州の学会幹部が村長を訪ね、村としての対応を問いただし、事態収拾への協力を要請した。
さらに、駐在所にも出向き、島民である学会員の人権を守るように求めた。
それでも、集落での迫害は、いっこうに収まらず、非道な仕打ちは、子どもにも及んだ。
学会員の家の子は、周囲の子どもたちに、「ソーカ! ソーカ!」と言われて、こづかれ、石をぶつけられることもあった。
だが、いじめられても、親には、何も言わなかった。
辛い思いをして頑張っている両親を、これ以上、苦しめたくなかったからだ。
同志は負けなかった。迫害のたびに、「これで宿命の転換ができるね」と言い合い、「いかに強敵重なるとも・ゆめゆめ退する心なかれ恐るる心なかれ」(御書五〇四㌻)との御金言を拝しては、決意を固め合った。