小説「新・人間革命」勝利島17 2015年 8月8日

学会が、第二組合をつくろうとしていると誤解した会社側は、学会の勢力を削がなくてはならないと考えた。
そして、会員宅を訪問しては圧力をかけ、御本尊を取り上げて回ったのである。
それを知った、この炭鉱の島の男子部員たちは立ち上がった。
男子部班長の田山広介をはじめ、三、四人の代表が、会社の労務担当者らに面会を求め、抗議した。
「『信教の自由』は、等しく認められた国民の権利ではないですか! 信仰の対象である御本尊を取り上げる権利は、会社といえどもないはずです。
これは『信教の自由』の侵害です。弾圧ですよ。
直ちに取り上げた御本尊を、お返しいただきたい!」
田山の言葉に、労務担当の責任者は、傲然と言い放った。
「御本尊というのは、仏壇に飾ってあった巻物のことだね。
私たちは、あくまでも本人の同意を得て、預かったんだよ。
『信教の自由』というが、『もう、学会はいやだ』という人が、学会をやめるのも、『信教の自由』ではないかね」
「それでは伺いますが、そもそも、会社が個人の信仰に、なぜ干渉するんですか。
今では、採用に際しても、創価学会員だと雇わないというではありませんか!
これは、宗教による差別です。
私たちは、基本的人権を守るために、断固、戦います」
「会社が干渉したというが、それは、学会員が、会社に迷惑をかけたり、不利益をもたらしたりする懸念があるからだよ」
「なんですって。どこに、そんな証拠があるんです。
学会では、仕事について、どんな指導をしているか、ご存じなんですか!」
田山は、「信心は一人前、仕事は三人前」というのが学会の指導であり、山本会長も、常々「職場の第一人者たれ」と訴えていることを、懸命に語っていった。
話し合うなかで青年たちは、会社側の理不尽な対応の背景に、学会への偏見と誤解があることを知った。
抗議はおのずから折伏となった。