小説「新・人間革命」源流 5 2016年9月6日
香港会館前の公園で林一家を励ました山本伸一は、午後六時半から行われた、香港の各部代表者会議に出席した。
会場は、十八年前、伸一が東洋広布の第一歩を印した時に宿舎とした、
尖沙咀にあるホテルであり、食事を共にしながらの集いとなった。
集ったのは、わずか十数人のメンバーであり、信心を始めて間もない人が、ほとんどであった。
そして、この席で香港地区が結成されたのである。
以来、香港は、着実に広宣流布の歩みを重ね、組織は五本部にまで拡大していた。
伸一は、各部代表者会議の参加者の中に、十八年前の座談会に参加していた、懐かしい何人かの顔を見つけた。
「草創の皆さんが、お元気なので嬉しい」
一人の婦人が笑顔で答えた。
「十八年といっても、あっという間でした。あの日の座談会が、まるで昨日のようです」
草創の歴史を築いてこられた方々が、福運に満ち満ちた姿で、元気に活躍されていること自体が、皆の希望であり、香港創価学会の勝利の姿です」
それから、彼は力を込めて語っていった。
それは『信義』です。
人間として、一人ひとりが、どこまでも『信義』を貫き、信頼を勝ち得ていく。
その信頼の拡大が即広布の拡大であることを知ってください。
仏法というのは、私たち自身の内にあり、私たちの振る舞いによって顕されていくものなんです。
すべては人間にかかっています。
どうか、悠然たる大河の流れにも似た大きな境涯で、人びとを包んでいってください」