小説「新・人間革命」 雌伏 十三 2017年4月7日

山本伸一の心からの願いは、皆が強盛に信心を貫き、幸福になることだけであった。
退転・反逆者や宗門僧は、創価の師弟を分断しようと、伸一が会合で指導したり、「聖教新聞」に登場したりできないように陰で画策を進めてきた。
その逼塞した状況のなかで、暗い空気がつくられていた。
伸一は、大きな会合への出席を制約されれば、家庭訪問、個人指導に奔走した。
話をするなというのであれば、和歌や俳句を詠み、ピアノを弾いて激励した。
何ものも、広宣流布への不屈の魂を抑え込むことなどできない。
長野研修道場に集っていた人たちに、伸一は提案した。
「もし、よろしければ、26日の日曜日にでも、ここにいらっしゃる皆さんと記念撮影したいと思いますが、いかがでしょうか。
また、ほかにも参加したいとおっしゃる方がいれば、遠慮なくいらしてください」
参加者から大歓声がわき起こった。長野の同志が願い続けていたことであった。その知らせは、瞬く間に全県下を駆け巡った。
県幹部たちは、果たして何人が集って来るのかわからなかった。
もし、2,000人、3,000人と詰めかけても、混乱することのないよう、青年部が中心となって、全力で受け入れの準備にあたった。
スムーズな撮影が行われるように、撮影台も3台つくることにした。
地域ごとに到着時刻も決めた。貸し切りバスで来るという地域もあった。
自家用車で来る人も多いにちがいない。駐車スペースの不足が懸念されたことから、研修道場の前を通る県道脇の空き地を使わせてもらうよう、土地の所有者と交渉した。
了承してもらったが、雑草が生い茂り、そのままでは使用できない。
「よし、男子部で草刈りをしよう」――皆、意気盛んであった。
今、この時に、師と共に会員を励ますために働けることが嬉しかった。
「師弟共戦」の自覚と行動があるところに歓喜が湧(わ)く。