小説「新・人間革命」 雄飛 七 2017年6月22日
絵画「チョモランマ峰」の寄贈にあたり、常書鴻・李承仙夫妻から、この絵を制作した文革直後の時代は、絵の具の品質が良くないので、末永く絵を残すために、描き直したいとの話があった。
山本伸一は、その心遣いに恐縮した。
新たに制作された同じ主題、同じ大きさの絵が贈られ、一九九二年(平成四年)四月、除幕式が行われた。
広く日本中に、敦煌芸術が紹介されていったのである。
第五次訪中で山本伸一たち一行が、中国共産党中央委員会の華国鋒主席(国務院総理)と会見したのは、二十四日の夕刻であった。
主席は、伸一に、笑顔で語りかけた。
「このたびの中国訪問は五回目と聞いております。
中国の古い友人である先生のお名前は、かねてから伺っておりました。
私のように、山本先生にお会いしたことがない人も、先生のこと、そして、創価学会のことは、よく知っています。
私は、学会の記録映画も拝見しました」
人間革命を機軸にした学会の民衆運動に、華国鋒主席も注目していたのである。
社会建設の眼目は、人間自身の改革にこそある。