小説「新・人間革命」 暁鐘 四 2017年9月4日

交歓会には、来賓としてカーン博士らも出席しており、あいさつに立った。
博士らは、いずれも、山本伸一が進める仏法を基調とした平和運動への期待を述べた。
最後に伸一がマイクを取った。
「私たちには、この地球上で幸せになる権利がある。平和に生きていく権利がある。
また、自由に生きていく権利がある。
では、それを実現していく源泉とは何か。日蓮大聖人の仏法であると訴えたい。
なぜか──人間こそが一切の原点であり、最も大切なものは生命です。
その生命をことごとく解明し、万人が等しく、尊極無上なる『仏』の生命を具えていることを説き、各人の崩れざる幸福と平和を確立する方途を示しているのが、大聖人の仏法であるからです。
また、それを実践しているのが創価学会です。
太陽が地球を遍く照らして、その光が恵みを与えるように、日蓮大聖人の仏法は、人びとに真実の幸福をもたらす教えであり、いわば太陽の仏法であります。
仏法のその厳たる力を、全世界の同志の体験が証明しています。
皆さんは、大仏法の光を浴びて、わが生命を蘇生させ、崩れざる幸せを築いてください。
一人の人間を幸せにし、満足させ得ないような宗教が、どうして世界の平和を実現し得よう。
どうして世界の人びとを救えようか。
どうか、皆さんは、この太陽の仏法を確実に実践し抜き、一人ひとりが幸せを厳然と享受していただきたいのであります。
今日の仏法兄弟の集いは、まだ小さな存在かもしれない。
しかし、三十年、五十年、百年後には、この集いが幸福と平和の広宣流布の大潮流をもたらし、今日という日が、記念の日と輝いていくことを確信してください」
伸一は、信心の目的は一人ひとりの幸福にあり、そこにこそ、平和運動の目的もあることを、確認しておきたかったのである。
戦争がなければ平和なのではない。人間が生の喜びを噛み締め、歓喜に包まれ、幸せを満喫して生きてこそ、平和なのだ。