小説「新・人間革命」 暁鐘 二十八 2017年10月3日

山本伸一は、今日、ルネサンスの理想を実現するために著名な思想家たちは、「新人間主義」「人間性革命」などを提唱し、人間自身の変革に最大の関心を寄せていることに言及した。
そして、それなくしては、人間が時代と社会の主役となり、真の幸福を手にしていくことはできないと指摘。
さらに、人間の変革のためには、自己自身を律し、無限の価値の創造をもたらす、生命の根本法が必要不可欠であると訴えたのである。
「その法こそが、南無妙法蓮華経であり、人間の生命をあますところなく説き明かした日蓮大聖人の仏法なのであります。
ここに、多くの思想家たちが理想とする人間変革の方途があり、この生命の大法にこそ、人類の未来を開くカギがあります」
参加者の多くは青年、なかんずく大学生である。伸一の目には、イタリア広布の希望の未来が広がっていた。
彼は、皆が「生命の世紀」の新しき旗手として立ってほしいと祈り念じながら言葉をついだ。
「自身の将来のためにも、広宣流布の未来のためにも、今は、しっかり学問に励んでいただきたい。
学生時代は、学問に打ち込むことが信心に通じます。
もちろん学会活動は大切ですが、今、学ばずしては、生涯、悔いることになる。
信心即生活であり、学生にとっては信心即学問であると言明しておきます」
次に、学会の役職の考え方について語った。
「学会の役職は、権威ではないし、役職のいかんによって、信心が強いか、弱いかが決まるわけでもない。
したがって、役職というモノサシで人を評価し、後輩たちを下に見るようなことがあっては絶対にならない。
どこまでも互いに尊敬し合い、信頼し合い、励まし合って、信心に取り組んでください。
学会の役職は、広宣流布の責任を担うための責任職です。
役職に就けば、苦労もあり、大変であると思う。
同時に、それだけ、功徳、福運が積めることは間違いありません」
伸一は、青年の育成に全力を注いだ。放っておいたのでは人は育たないからだ。