小説「新・人間革命」〉 暁鐘 五十 2017年10月30日

詩を読み上げる力強い声が会場に響く。
フランスの青年たちの瞳が輝き、新しき世紀への旅立ちの決意が燃える。
 
 「今ここに 立ちたる青年の数二百名 君達よ
  フランス広布の第二幕の峰の頂上に立ちて
  高らかなるかっさいと 凱歌をあげるのだ
  そのめざしゆく指標の日は 西暦二〇〇一年六月十四日
  この日なりと――」
 
朗読が終わった。
一瞬の静寂のあと、感動と誓いの大拍手が広がった。
この日、フランスの青年たちの胸に、二〇〇一年という広布と人生の目標が、明確に刻まれたのである。
目標をもつ時、未来の大空に太陽は輝き、美しき希望の虹がかかる。人生に目標があれば、歩みの一足一足に力があふれる。
山本伸一は、全参加者と共に記念のカメラに納まり、新しい旅立ちを祝し、励ました。
「まず、二十年後をめざそう。人びとの幸福のため、平和のために、忍耐強く自らを磨き鍛えて、力をつけるんだよ。自分に負けないことが、すべてに勝つ根本だよ」
――「ねばり強さだけが、目標の達成への道なのだ」(注)とは、人生の勝利を飾る要諦を示した、詩人シラーの箴言である。
伸一が、パリでも力を注いだのは、信心懇談会であった。特に青年たちとは、折々に語らいの場を設け、信心の基本や仏法者の生き方などを語っていった。
彼は、皆を二十一世紀を担う大人材に育てたかった。
だから自身の生命を紡ぎ、捧げる思いで真剣に語らいを重ねた。
ある懇談会では、こう訴えた。
「仏法では、皆が広宣流布を担う尊き使命の人であり、地涌の菩薩であると説いている。
その使命を自覚した時、人は最高最大の力を発揮していくことができるんです」
 
小説『新・人間革命』の引用文献
注 『フリードリッヒ・シラー詩集』ヨーヘン・ゴルツ編、インゼル出版社(ドイツ語)