小説「新・人間革命」 暁鐘 五十三 2017年11月2日

大西洋を越えて、山本伸一の一行がニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港に到着したのは、現地時間の十六日午後三時前であった。
ニューヨークは六年ぶりの訪問である。
このニューヨークでは、以前、現地の宗門寺院に赴任した住職が狡猾に学会批判を重ね、それに紛動された人たちによって組織が攪乱され、なかなか団結できずにいた。
伸一は、徹底してメンバーと会い、地涌の使命に生きる創価学会の確信と誇
りを、一人ひとりに伝え抜いていこうと心に決めていた。
また、アメリカの広宣流布は、ロサンゼルスなど西海岸が先行しており、ニューヨークなど東海岸での広布の伸展が、今後の課題でもあった。
そのためにも人材を育てたかった。
彼は、この日も、翌日も、ニューヨークを含むノース・イースタン方面の中心幹部らと何度となく懇談し、指導を重ねた。
アメリカは、自由の国ですから、皆の意思を尊重することが大事です。
幹部が一方的に、自分の意見を押しつけるようなことがあってはなりません。必ず、よく意見交換したうえで、物事を進めていくべきです。
もし、意見が食い違った場合には、感情的になったり、反目し合ったりするのではなく、御本尊、広宣流布という原点に立ち返り、一緒に心を合わせて唱題していくことです。
御聖訓に、『仏法と申すは道理なり』(御書一一六九ページ)と仰せのように、活動方針などを打ち出す際にも、皆が納得できるように、理を尽くすことです。
つまり、常に道理にかなった話をするように心がけてください。
道理は万人を説得する力となる。その意味からも教学力を磨いていただきたい。
御書が、それぞれの生き方に、しっかりと根差していけば、同志を軽んじたり、憎んだりすることも、妬んだり、恨んだりすることもなくなり、心を合わせていくことができる。
御書は、自分の規範であり、生き方を映し出す鏡です。
したがって、人を批判する前に、自分の言動や考え方を、御書に照らしてみることです。それが仏法者です」