小説「新・人間革命」 暁鐘 六十九 2017年11月22日

根が深く、しっかりしていてこそ、枝や葉も茂る。平和運動も同じである。
多くの人が平和を願い、平和を叫びはする。しかし、根となる哲理なき運動ははかない。
私たち創価学会平和運動には、生命の尊厳を説き明かした、仏法という偉大なる哲理の根がある。
人間一人ひとりを「仏」ととらえる仏法の法理に立てば、絶対に人の生命を、生存の権利を奪うことなどできない。
また、イデオロギーも、民族も、国家も、宗教も超えて、万人が平等に、尊厳無比なる存在であることを説く仏法の視点には、他者への蔑視や差別はない。
さらに、慈悲を教える仏法には、いかなる差異に対しても排他性はない。
この生命尊厳の法理を、つまり、妙法という平和の種子を、人びとの心田に植え続けていくことこそが広宣流布の実践であり、それが、そのまま世界平和の基盤になることを、山本伸一は強く確信し、実感していた。
次いで彼は、人生の目的とは真の意味で幸福になることであり、それには「死」という問題を解決することが不可欠であると述べた。
この大問題を根本的に解決し、生命の永遠と因果の理法を説き明かしたのが日蓮大聖人の仏法である。
その仏法に立脚してこそ、不動なる人生観を確立し、困難を乗り越える智慧と力を涌現させ、絶対的幸福境涯を開いていくことができるのである。
伸一は、この日を起点に、さらに新たな二十年をめざしつつ、清らかな、麗しい創価家族として、所願満足の人生を送っていただきたいと望み、話を結んだ。
総会の最後は、愛唱歌の合唱である。
二十人の鼓笛隊が壇上に進み、演奏を開始した。
メンバーは、バンクーバーカルガリーモントリオールなどからも参加しており、全カナダの鼓笛の友の演奏は、これが初披露となった。
その中心者は、イズミヤ夫妻の長女カレンであった。新しい世代が育っていた。
場内の同志は、総立ちとなり、肩が組まれた。スクラムは大波となって、右に左に揺れた。歌声は歓喜潮騒となって轟いた。