小説「新・人間革命」 暁鐘 七十 2017年11月23日

二十三日、トロント郊外にあるカレドンに千人余のメンバーが集い、日本の親善交流団との文化交歓会が、晴れやかに開催された。
会場は、木々に囲まれた丘で、冬はスキー場になるという。
ゲレンデの緑が、太陽の光に映えてまばゆかった。
文化交歓会は、ガーデンパーティー形式で、昼食をとりながら行われた。
やがて、カナダの少年・少女部の合唱で、ミニ文化祭の幕が開いた。
日本の交流団は、「厚田村」や中部の「この道の歌」の合唱、「さくら変奏曲」や、「武田節」の舞などを披露。
カナダの友は、ケベックフォークダンスや、音楽家メンバーによる「森ケ崎海岸」の演奏、婦人部による「広布に走れ」の合唱など、熱演、熱唱を繰り広げた。
あいさつに立った山本伸一は、「見事な合唱、芸術の薫り高い演奏、真心のダンスなど、夢のひと時をすごすことができました」と感謝の思いを述べた。
そして、将来、カナダ文化会館を建設してはどうかと提案するとともに、この千人の同志が太陽の存在となって、地域に貢献しつつ、洋々たるカナダ広布の未来を開いてほしいと期待を寄せた。
この日、伸一は、ミニ文化祭の前後に、多くのメンバーに声をかけ、激励を重ねた。会場を提供してくれたスキー場の支配人にも、御礼のあいさつをした。
対話することは、仏縁を広げることだ。
この支配人の継母はメンバーで、伸一が一九六四年(昭和三十九年)にイランのテヘランを訪問した折、激励した婦人であった。
――テヘランで伸一たちは、中華料理店のマネジャーをしている太田美樹という学会員の婦人を店に訪ねた。
ところが、オーナーの話では、契約が切れたので既に店を辞め、今、旅行中とのことであった。
その時、イラン人の従業員が、伸一の顔を見て「オーッ!」と声をあげ、店の奥から写真誌を持ってきた。『聖教グラフ』であった。
ページを開き、伸一の写真を指差し、「ミスター・ヤマモト!」と言って微笑んだ。