小説「新・人間革命」 暁鐘 七十四 2017年11月28日

山本伸一は、隣にいた妻の峯子に言った。
「ローラ・セコールの生き方は、学会の婦人部に似ているね。
彼女は、英軍を救うために恐れなく、勇敢に行動した。
そこには、強い信念と勇気がある。
しかも、大功労者でありながら、威張ったり、権威ぶったりするのではなく、夫を支え、また、母として黙々と子どもたちを育てていった。
まさに婦人部の生き方そのものだね」
峯子が、笑顔で大きく頷きながら答えた。
「本当にそうですね。歴史が大きく動いていった陰には、女性の努力や活躍が数多くありますが、そこに光が当たることは少ないんですね」
それを受けて、伸一は、同行のメンバーに向かって語った。
「私も、その通りだと思う。
だから私は、どこへ行っても、民衆、庶民のなかのヒーロー、ヒロインを、草の根を分け、サーチライトで照らすようにして探し出そうとしているんだよ。
無名でも、人びとの幸福と平和のために、一身を捧げる思いで、広宣流布に尽力してくださっている方はあまりにも多い。
不思議なことです。
まさしく、地涌の菩薩が、仏が集ったのが創価学会であるとの確信を、日々、強くしています。
私は、その方々に光を当て、少しでも顕彰していこうと、各地で功労の同志の名をつけた木を植樹したり、また、各地の文化会館等に銘板をつくって、皆さんの名前を刻ませていただいたりしてきたんです。
幹部は、決して、学会の役職や、社会的な地位などで人を判断するのではなく、誰が広宣流布のために最も苦労し、汗を流し、献身してくださっているのかを、あらゆる角度から洞察し、見極めていかなくてはならない。
そして、陰の功労者を最大に尊敬し、最高に大切にして、賞讃、宣揚していくんです。
つまり、陰で奮闘してくださっている方々への、深い感謝の思いがあってこそ、組織に温かい人間の血が通うんです。
それがなくなれば、冷淡な官僚主義となってしまう」