小説「新・人間革命」 暁鐘 七十六 2017年11月30日

山本伸一は、六月二十五日午後五時(現地時間)、百五十人ほどのメンバーに見送られ、カナダのトロント国際空港を発ち、約一時間半の飛行でアメリカのシカゴに到着した。
シカゴでは、二十八日に、今回の北米訪問の最も重要な行事となる、第一回世界平和文化祭が開催されることになっていた。
それは、世界広布新章節の開幕を告げる祭典であり、まさに世界宗教としての創価学会の、新たな船出の催しであった。
伸一は、シカゴ訪問では、「シカゴ・タイムズ」のインタビューにも応じた。
また、シカゴ市は、市長が公式宣言書を出して、伸一の平和行動を高く評価し、二十二日から、平和文化祭が行われる二十八日までを、伸一の名を冠した週間とすることを宣言。
シカゴ市民に対して、伸一並びに平和文化祭参加者の歓迎を呼びか
けたのである。
同行した日本の幹部たちは語り合った。
「本当に世界広布の時代が到来している! こうしてアメリカで、メンバーの社会貢献の活動や、青年を大切にし、青年がはつらつと活躍しているSGIの運動に、大きな期待が寄せられていることが、何よりの証拠だ」
「残念だが、日本には島国根性のようなものがある。新しい民衆運動に対しても、その発展を妬んだりして、正視眼で見ない。
時代はどんどん変化している。狭い心では、世界からどんどん取り残されていってしまう」
「一月に山脇友政が恐喝容疑で逮捕されて以来、山脇が一部マスコミを利用して学会を誹謗中傷していた内容が、いかにいい加減なものかが明らかになった。
今こそ、学会の真実を訴え抜いていくのが私たちの使命だ」
二十七日には、学会が寄進したアメリカ五カ所目の寺院(出張所を含む)がシカゴ郊外に完成し、法主日顕が出席して落慶入仏式が挙行された。
これには伸一も参列した。
彼は、僧俗和合によって、広宣流布が進むことを願い続けていた。
ただ、ただ、広宣流布大願成就のために──これこそが、常に創価学会に脈打つ不変の大精神であった。