小説「新・人間革命」 暁鐘 七十七 2017年12月1日


六月二十八日、二十一世紀へと羽ばたく歴史的な第一回世界平和文化祭が開催された。
シカゴ郊外にある会場のローズモント・ホライゾン(後のオールステート・アリーナ)には、世界十七カ国の在米大使館関係者をはじめ、各界の来賓、各国のSGIメンバーの代表ら約二万人が集った。
テーマ曲「朝日」の合唱が流れる。「生命の世紀」の朝だ。
白いユニホームに身を包んだ、眠りから覚めた青年たちが、躍動のダンスを踊り始める。
ステージは四面で構成され、中央と、その前、そして左右にも舞台がある。
それらを駆使して、アメリカのメンバーが、ラテン・アメリカ、アフリカ、西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、中東、アジアの歌と踊りを相次ぎ披露していく。
メンバーは、日々、練習を重ねて、各国の踊りを習得したのだ。
ロシアのダンスを踊ったニューヨークの友は、ソ連の人びとに思いを馳せ、その心になりきって踊ろうと努めた。
練習に励むうちに、イデオロギーや国家の壁を超えて、まだ見ぬソ連の人びとが、親しい友人に思えてきたという。
文化には、心と心をつなぎ、人間と人間を結び合う力がある。
日本からの親善交流団も日本舞踊や民謡などを披露。日本の音楽隊も登場した。
また、創価合唱団が力強く「威風堂々の歌」を合唱すると、アメリカの草創期を切り開いてきた婦人たちが、労苦の幾山河を思い起こし、目に涙を浮かべる一幕もあった。
長野県男子部は、舞台狭しと組み体操を展開し、五段円塔をつくり上げた。
「オーッ」と感嘆の声が場内を包み、喝采が広がった。
どよめきが続くなか、二つのグループが左右の舞台で、パレスチナイスラエルの民族舞踊を踊る。
踊り終わって双方から何人かが中央の舞台に近づく。
しかし、ためらう。それでも、自らを鼓舞するように歩みを運んでいく。
そして、固い握手を交わした。
大拍手が沸き起こった。
それは、平和を願う全参加者の願いであり、祈りであった。