小説「新・人間革命」 勝ち鬨 八 2017年12月15日

九月六日付の「聖教新聞」には、十一月に徳島講堂の落成を記念して祝賀行事が行われ、山本伸一も出席する予定であることが報じられた。
伸一の行事出席の予告は異例のことであり、それは、いよいよ全国の同志とスクラムを組み、新たな前進を開始しようとする、彼の強い決意の表明でもあった。
また、十月三十一日、創価大学の第十一回「創大祭」のオープニングセレモニーに出席した彼は、「歴史と人物を考察──迫害と人生」と題して講演した。
そのなかで、悲運の晩年を強いられた菅原道真、万葉の歌人柿本人麻呂明治維新の夜明けを開いた頼山陽吉田松陰らは、いずれも迫害と苦難の人生を生き、後世に光る偉大な足跡を残したことを述べた。
さらに、中国では戦国時代の詩人にして政治家の屈原、大歴史書史記』を著した司馬遷、また、インドの偉大なる魂・ガンジー、西洋にあっては文豪ユゴー、哲学者ルソー、現代絵画の父セザンヌなど、
嵐のなかを営々と信念の歩みを貫いた崇高な人間の生き方を語った。
そして、偉業には、迫害、苦難が、なかば宿命づけられていると洞察していった。
──それは、歴史的偉業をなす人物は、民衆の大地にしっかりと根を張っている。
それゆえに、民衆の犠牲の上に君臨する権力者たちは危機感を募らせ、野望と保身から発する妬みと羨望の炎に身を焦がし、民衆のリーダーを躍起になって排斥しようとするからである。
それが迫害の構図であると訴えたのだ。
彼は、力を込めて、自身の信念を語った。
「私も一仏法者として、一庶民として、全くいわれなき中傷と迫害の連続でありました。
しかし、僭越ながら、この迫害の構図に照らして見れば、迫害こそ、むしろ仏法者の誉れであります。
人生の最高の錦であると思っております。後世の歴史は、必ずや事の真実を厳しく審判していくであろうことを、この場をお借りして断言しておきます」
伸一は、未来に向けての勝利宣言を、愛する創大生と共に、とどめたのである。