小説「新・人間革命」 勝ち鬨 十三 2017年12月21日

四国の青年たちが企画・推進した平和行動展は、広宣流布の新しき道を照らし示す、一つの光明となった。
ただ指示されて動いていたのでは、未来の開拓はない。
「前進を阻んでいるものは何か」「時代、社会の課題は何か」を読み取り、積極的に、絶えざる挑戦を重ねていくなかにこそ、新たなる創造の道はある。
「革命または改良といふ事は必ず新たに世の中に出て来た青年の仕事」(注)とは、詩国ともいうべき四国が誇る正岡子規の言葉である。
山本伸一が、徳島から四国研修道場に到着したのは、十日の午後五時過ぎであった。
そして夜には、研修道場で開催された11・10「香川の日」記念幹部会に出席した。
大拍手のなかを進み、伸一は席に着いた。
同志は、皆、元気であった。創価の師弟を分断しようとする、卑劣な悪僧の言動に苦しみながらも、今、見事にそれを勝ち越えて、喜々として集って来たのである。
まさに凱歌轟く新しき出発の時が来たのだ。
あいさつで伸一は、声高らかに宣言した。
「もう一度、指揮を執らせていただきます! これ以上、ご心配、ご苦労をおかけしたくない。
私の心を知ってくださる方は、一緒に戦ってください!」
それは、鉄鎖を断ち切った師子の叫びであった。万雷の拍手が鳴りやまなかった。
彼の胸には、創価の師弟の絆が強ければ、いかなる邪悪も、必ず打ち破っていける。
もう、仏意仏勅の広宣流布の団体である学会の前進を、横暴な衣の権威で阻ませてはならない。
今こそ、反転攻勢の時だ!との、断固たる誓いの火が燃えていた。
何があろうが、創価の師弟の精神だけは、途絶えさせてはならない。広宣流布の道が閉ざされてしまうからだ。
当然、会内の運営については、会長の秋月英介を中心に、皆で合議して進めていくことになる。
彼は、根幹となる創価の師弟の道を、自らの行動をもって、これからの青年たちのためにも、示し伝えていきたかったのである。
 
小説『新・人間革命』の引用文献
注 正岡子規著『病牀六尺』岩波書店